暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第240話 ジェナ・ライアンの戦い
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
餌にしてやるのだッ!」
「……話が違う。女は殺さない、そういう約束だったはずだ」
「そんなことを言っている場合かッ! ワシが殺せと言ったら殺せッ!」

 思い通りに動かない用心棒に、ボスは唾を飛ばして喚き散らしている。そんな彼には見向きもせず、「鉄拳兵士」はジェナの真っ直ぐな瞳を見つめ続けていた。

「……奴隷だろうと、迫害されるだけの人生であろうと……生きてさえいれば、何かが変わる可能性だけは残る」
「な、なんだと?」
「例え恨みや憎しみだけが動機であろうとも、自分が生きることしか考えていなくとも――死なない限りは、違う生き方を探すこともできる」
「……?」
「それさえ奪う行いを、進んでしようとは思わん。殺すくらいなら、俺が貰う」
「――は、はぁ!?」

 その突拍子もない言葉に、ジェナは唖然とする。次いで、ボスはさらに声を荒げた。

「何を戯けたことを! 保安官の小娘なぞ、生かしておいていいわけがあるか! ワシの命令が聞けんのか、貴様ッ!」
「……」
「もうよい、貴様が殺さんのならばワシがやる! どけッ!」

 一向に命令を聞く気配を見せない部下に苛立ちを募らせ、ついにボスは自ら手を下すことを選ぶ。彼は地を這うように小型拳銃を拾うと、手早くその銃口をジェナに向けた。
 立て続けに引き金を引く指の動きには、一切の躊躇もない。

「……ッ!」
「ちょっ……!」

 すると「鉄拳兵士」はジェナの身体を咄嗟に抱き寄せ、背中でその銃撃を受け止めてしまった。
 旧型である「銅殻勇鎧」の先行試作型では、ゼロ距離射撃に耐えるのにも限界がある。小型拳銃が弾切れになるまで、ジェナを庇い続けていた彼の背部装甲は、既に亀裂が走っていた。

「き、貴様! ワシに楯突くつもりか! 今まで育ててやってきた恩を忘れおって!」
「……」
「許さんぞ……裏切り者め! 取引先と合流したら、すぐに貴様など――ぶッ!?」

 それはボスにとっては重い裏切り行為でしかなく、彼は目を剥いて「鉄拳兵士」を罵倒する。
 しかし、その言葉が終わる前に――彼の脂ぎった顔は、鋼鉄の裏拳に跳ね飛ばされてしまった。

「――忘れてはいない。だから、報いを受ける時はあんたと一緒だ。ボス」

 宙を舞い、力無く地面に墜落していくシンジケートの首領。その姿を静かに見つめながら、「鉄拳兵士」は独りごちた。

「あ、あんた……」
「……さあ、戦いは終わりだ。逮捕したいのならさっさと済ませろ、もたもたしてると新手が来るぞ」

 ジェナは「鉄拳兵士」の腕から解放されると、狼狽した表情で彼を見上げる。新手とは、シンジケートが取引先としていた武装組織のことだろう。
 確かに、特捜隊が崩壊している今の状況では、武装組織には到底歯が立たない。それに、
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ