第239話 鉄拳同士
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激しく回転しながら地面に墜落する。
その様を見届けた龍太は、確かな手応えを感じていた。
一秒にも満たない時間の中で交わされた攻防。その一瞬を制した彼は、身を震わせながらも立ち上がる「鉄拳兵士」の背を見つめ、思案する。
(見え透いた奇襲になど――か。やはり、ただの戦闘マシーンじゃなかったな)
「鉄拳兵士」は今まで、数多くの人間を半殺しにしてきた。軍人、傭兵、要人、偶然現場に居合わせた民間人……。彼の手に掛かった人々の痛みは計り知れない。
しかし、彼は記憶を失わせるような打撃のみを繰り返し――誰一人として殺してはいなかった。殺すよりも何倍も難しい戦い方を、選び続けていたのだ。
(俺にこだわっていることといい……なんで、こんな奴が……)
その理由を知ることに価値を見出す龍太。気づけば彼は、敢えて構えを解き――片膝で辛うじて立っている「鉄拳兵士」に歩み寄っていた。
そんな彼を、銅色の男は静かに見上げている。
「……さっきはちと惜しかったが、見事なパンチだった。俺でなきゃ、確実に入ってたろうよ」
「……」
「その見事な腕前ついでに、ワケを聞いてもいいかな。それだけの力を、シンジケートに捧げている理由」
「鉄拳兵士」が、その強さを悪事に委ねている現状。その経緯を尋ねる龍太に――彼は沈黙と。
「……シィッ!」
――拳で答えるのだった。お前に語るつもりはない、と。
それも想定に含んでいた龍太は、片膝の体勢から繰り出されて来たストレートをスウェーでかわす。
……しかし、「鉄拳兵士」の攻勢はそれだけでは終わらなかった。
「……ッ!」
「な……ッ!」
紙一重でかわした龍太の首に、パンチをかわされた腕が勢いよく絡み付く。スウェーで避けられることを想定した動きだった。
向こうも、こちらの動きを読んでいたのである。
そして、たじろぐ暇も与えず――龍太の眉間に、一角を突き刺すように放たれた頭突きが炸裂する。
その一撃は「救済の超機龍」の仮面を貫き、龍太自身の生身を傷つけた。
「……!」
悲鳴を上げるまもなく、龍太の身体は膝から崩れ落ちていく。
その時――地に倒れ伏す彼を、「鉄拳兵士」が受け止めた。
「……」
銅色の男は無言のまま、龍太の身体を静かに寝かせる。容赦のない攻撃を繰り返した伝説の用心棒とは、別人のようだった。
再び、静けさを取り戻す荒野の戦場。その周囲を見渡した後――「鉄拳兵士」は踵を返し、アジトへと帰還していく。
――だが。
「……やっぱ、強いな。あいつ」
打ち倒されたはずの「救済の超機龍」は……一煉寺龍太は。
「あいつなら、俺がマジになっても大丈夫そうだ」
額から血を流しながら
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