第239話 鉄拳同士
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の一言を合図に――戦いの幕が上がる。
「鉄拳兵士」の速攻が始まったのは、その直後だった。
「おっ……と!」
「……シッ!」
手数とパワーを共有する、拳という弾丸の雨が降る。その連撃を、龍太は紙一重でかわし――適度な間合いを確保する。
しかし、流れは「鉄拳兵士」にあった。
素早いジャブやフック、ストレートの連打は龍太を徐々に後退させ、追い詰めて行く。
横転した装甲車を背後にした瞬間、彼は大きく跳び上がり……相手の視界から逃れるように、車体の裏側に着地するのだが。
「……ォオッ!」
地の底から唸るような叫びと共に――「鉄拳兵士」は装甲車をアッパーで殴り飛ばしてしまった。車体の向こう側に降りた龍太に、その鉄塊をぶつけるために。
いかに「救済の超機龍」と言えど、十数トンの装甲車をぶつけられては、ひとたまりまない。
そう。それを纏う人間が、「超人」に近しい「人間」である一煉寺龍太でさえなければ。
「――ホワチャアアアッ!」
怪鳥音が轟く瞬間、龍太の蹴り上げが装甲車を舞い上げ――彼の後方に墜落する。その衝撃で砂埃が吹き上がり、夜空を覆い隠してしまった。
「ひ、ひひぃあぁっ!」
「うわぁああぁああっ!」
人智を超えた、超人同士の戦い。その激しさを肌で感じた特捜隊の兵士達は、武器を捨てて戦場から散らばって行く。
(……いいんだぜ、怖いなら逃げても。その方が、俺としても戦いやすくていい――が)
龍太はそんな彼らを一瞥し、踵を返して「鉄拳兵士」に背を向ける。しかし、銅色の拳士は両拳を構えたまま、動き出す気配を見せなかった。
ちらり、とそんな彼の様子を見遣りながら――龍太は気絶しているルナイガンを担ぎ上げた。
(誰か一人くらい、助けてやれよなぁ。お前らの隊長だろうがよ)
胸中でぼやきつつ、彼はルナイガンを唯一無事なトラックの荷台に寝かせる。その作業を終えて元の位置に戻ってくるまで、「鉄拳兵士」はただ静かに待ち続けていた。
「……あんたなら、待っててくれると思ってたよ」
「……言ったはずだ。見え透いた奇襲になど、頼るつもりはない」
「カッコいいねぇ。……悪党なのが勿体ない」
龍太の感心した声が「鉄拳兵士」の聴覚に届く瞬間。
彼は、再び攻撃を再開する。
十数メートルの間合いを一瞬で詰め、低姿勢からのアッパーカット。弾丸の如く――という言葉が比喩にならないほどの速さだった。
しかし。
「がっ……!」
「鉄拳兵士」の拳は、龍太の仮面の鼻先を掠め――
「速いな」
――龍太の上段回し蹴りが、「鉄拳兵士」の三日月を打ち抜いていた。
頬と顎の中間に存在する急所に痛烈な一撃を浴びた銅色の身体は、
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