第239話 鉄拳同士
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…しかしあんた、随分と慎重なんだな。俺を倒せるチャンスならいくらでもあったはずだが」
「……お前が見え透いた奇襲で勝ちを拾える相手だとは、思わん……」
「ほう、随分と高く評価されてるらしいな」
「事実を述べているまでだ」
その冷淡な口調に反して、彼の両拳は既にこれから始まる闘いを期待し、武者震いを始めている。その姿を一瞥した龍太は、僅かに目を細め――瞬時に「救済の超機龍」を纏うのだった。
「さすが、『鉄拳兵士』様はお目が高い。ジェリバン元帥にも負けてないぜ。……もっとも、その鎧はそろそろ博物館入りだろうがな」
「……!」
言葉の最後に付け足された単語に、「鉄拳兵士」は反応するように一瞬だけ両肩を震わせた。
軽いフットワークで常に体を揺らしている彼にとっては微々たる動きであったが、それを見逃す龍太ではない。
仮面の奥の瞳を細め、口元を静かに緩ませる。そして、自らが知り得る「鉄拳兵士」の全てを語るのだった。
「『鉄拳兵士』――本名、真壁悠。日本人ではあるが、出生後間も無くダスカリアン王国に渡って来た移民の一人。十五年前のジェノサイドで両親を失った後、武器密売シンジケートに拾われ、用心棒として育成される」
「……ッ!?」
「その後はシンジケートが戦乱に乗じて奪取した、『銅殻勇鎧』の先行試作型を使って組織お抱えの用心棒となった……どうだ? タレコミだが、そこそこ信頼できる筋からの情報だからな。まるっきりハズレでもねーだろ」
龍太の発言に対し、「鉄拳兵士」は何も答えない。しかし、そのフットワークには微かな乱れが出来ていた。
彼が言う通り、全て外れているような見当違いの情報だったならば――こんな影響は出ない。思うところがなければ、このような反応はあり得ないのだ。
「――ジェノサイドが起きた当時、遺体が発見されなかった子供のリストにあんたの名前があったらしくてな。あんたが過去の活動で現場に残した指紋や頭髪を研究して、ようやく繋がったんだ」
「……」
「政府が公にしないはずさ。なにせ、今は日本の助けがなきゃ国が存続できない状況なんだ。そんな中で日本人への憎しみに拍車を掛けるような情報が出回ったら、それこそダスカリアンは自滅の道にまっしぐらよ」
現地のダスカリアン人に彼を始末させては、その情報が漏れてしまう。牛居敬信が日本政府を代表して、日本人の龍太にシンジケート壊滅を依頼した理由の一つは、彼にあったのだ。
彼自身にどのような思いがあって、シンジケートに与しているかは知らない。それでも龍太は、同じ日本人として彼を見過ごすわけには行かないと――拳を握るのだった。
「――さあ、かかってきな。長かったあんたの闘いに、幕を引いてやるよ」
「……ッ!」
そして。
そ
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