第237話 決戦の幕開け
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訓練ばかりで実戦経験に欠ける者が多い男性兵士で構成された特捜隊は、早くも瓦解の危機を迎えている。その中で唯一、冷静さを保っているルナイガンも、額に焦燥の汗を滲ませていた。
女性が中心だったダスカリアンを変え、男の強さを証明するために編成された、この特捜隊。その急先鋒たる自分達が敗走したとあっては、今まで築き上げてきた地位を失いかねない。国民に不安を煽らせないための少数精鋭、という持ち味も失うことになる。
特捜隊が発足するまで国防軍を支えていた女性兵士達に「貴様らは用済み」と大見得を切った手前、無様な負けは晒せない――という意地もある。
出世を重ね、女王を手に入れることに執着していたルナイガンにとって、それは耐え難い結末であり……それゆえにそうなってはならない、負けてはならないという強迫観念が、彼自身を追い詰めていた。
その隙を狙うように現れたシンジケートの兵士達が襲撃してきた時、その表情はさらに強張ったものになる。
「ちいっ! 後退、後退しろ! 体勢を立て直せェッ!」
特捜隊の兵士達はルナイガンの指示に応じ、ひっくり返った装甲車の影に逃げ込んで行く。それを目撃したシンジケートの兵士達は、装甲車に向けてがむしゃらに銃を連射した。
「ひ、いい……こんな、こんなはずじゃあ……!」
「ちくしょう、ちくしょう! このままで、終われるかぁぁ……!」
銃弾そのものは当たらなくとも、その攻撃は特捜隊の戦意を大きく削いでいる。負けじと撃ち返す兵士もいたが、勢いはシンジケートに奪われたと言っていい。
村の跡地を戦場にした、特捜隊とシンジケートの銃撃戦は膠着状態を迎えようとしていた。
……その一方。
女王陛下から同行を命じられ、この戦場に向かっている――はずだった保安官は。
「ねぇ、先輩! もっとスピード出ないのこれ! 国防軍の女性兵からも応援されてるんだから、ちょっとは気張りなさい!」
「とほほ、変身ヒーローのマシンが軽トラってどういうことなのよ……」
錆び付いた三輪トラックで、ゆっくりと現場に急行していた。本来ならば同行するはずのない上司を、荷台に乗せて。
(さてと……剣一が言っていた「鉄拳兵士」とやらは……どう出るかな)
――だが。その眼差しが剣の如き鋭さを纏っていたことに、気づく者はいない。
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