第236話 天真爛漫な女王陛下
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ってればなぁ。いや、それだと保安局が国防軍に飲まれちまってたかも知れないし……う〜ん……」
「リュウタ殿は、権威という鎧を着ていては人々の本音に向き合えない……と語っておりましたな。確かに、彼には保安官として直に人々に尽くして行く方が性に合うのでしょう」
「だけど……ついこないだまで、道を歩くだけで石を投げられてたって話じゃないか。国防軍の将官に取り立ててやれば、今頃は……」
「姫様。彼には彼の想いがあるからこそ、今のやり方に殉じているのでしょう。我々も、ここは彼の力を信じる他ありません」
「……う、うん……」
龍太の選択を尊重したい一方で、その身を案じずにはいられない。そのジレンマに眉を顰める姫君を見遣り、ジェリバンは剣一に耳打ちする。
「ケンイチ殿。リュウタ殿は武器密売シンジケート壊滅の任務が完了し次第、日本に帰国すると聞いているが……それ以降、こちらに来る機会はあるのか?」
「さ、さぁ……。ですが、当分は日本から離れないでしょうね。何せその頃には新婚ですから」
「ふむ、そうか……。ならばヤムラ殿と共にこの王宮で暮らすつもりはないか、聞いて見てはくれぬか? 貴殿の方が付き合いは長かろう」
「……非常に恐れ多いのですが、彼をどうするつもりで?」
「どうするか……いや、『どうなるか』は本人達が決めることだが――少なくとも、あのような不埒者が寄り付かぬようにはしたい」
「やはり、気づいておりましたか」
「あのようなあからさまな目線、気づかぬ方がどうかしている。私ももう歳だが、姫様を守り抜ける殿方が見つかるまでは、親代わりでいるつもりだ」
先程、獣欲に爛れた視線をダウゥに注いでいた兵士。その表情を思い返す度に、ジェリバンのこめかみからは血管がはち切れんばかりに浮き出ていた。
その様子を剣一は無言で見つめ――納得するように深く頷く。そんな二人を、ダウゥは訝しんでいた。
「二人とも、さっきから何ヒソヒソ話してたんだ? ……あ、そうか」
「あ、いえ。姫様、これは……」
「今日の献立の打ち合わせだな!? いやー、ケンイチが作る晩飯は何度食っても飽きねぇからなー! で、今日は何だ? オレ、スシがいいな!」
無邪気そのもの、と言うべき表情を前にした二人は、互いに顔を見合わせ――彼女よりも大きく溜息をつく。先程まで厭らしい目で見られていた美女の台詞ではなかった。
(――あの子の鈍感が移ったんだな)
そんな彼女の様子を見つめながら、剣一は原因と思しき青年の顔を思い浮かべていた。
しかし、その表情にダウゥのような思案の色はない。
古我知剣一は確信していたのだ。
今の一煉寺龍太ならば、どのような障害に阻まれようと決して負けない……と。
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