第235話 二人の予感
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人のようだが――その肉体は「廃人」には似つかわしくないほどに鍛え抜かれていた。
茶髪のショートヘアとブラウンの瞳、そして端正な顔立ちの持ち主である彼は、それ以上の動きを見せることなく、ただ静かに天井を見つめ続けている。
「くそう、国防軍め! 何が何でもワシを捕まえる気かっ! このままでは絶対に終わらんぞ……!」
その時、牢の外から肥え太った初老の男が息を切らして駆け込んでくる。自分の身に迫る危機を感じてか、既にその顔は脂汗だらこになっていた。
「おいっ、『鉄拳兵士』! 出番だぞ、『鉄拳兵士』ッ!」
そして助けを求めるように、牢の中にいる男に声を掛ける。その声を受け、男の虚ろだった瞳に僅かな光が灯った。
「……戦い、か……」
「そうだ、戦いだ! 今こそお前を育ててやったワシに報いるんだ! いいな!?」
「……」
焦燥感に満ちたその声を聞きながら、男は牢の鉄格子に手を伸ばし――針金のように、簡単にそれをひしゃげさせてしまった。
「ひ、ひひぃぃいぃっ!」
「……予感が、する」
「よ、よ、予感?」
その異常な膂力にひっくり返る肥満男には見向きもせず、鉄格子を破った男達は拳を握りながら――再び天井を見上げる。
「……戦いの、予感だ」
これが――二人の拳士による一騎打ちの、予兆であった。
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