第235話 二人の予感
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わりが見えてきたらしい。
しかし、その幕引きをルナイガン達に任せるには少しばかりの不安があると、龍太は感じていた。
ルナイガンは龍太に次いで、武器密売シンジケートの件において高い実績を上げている。確かに、実力という面においては信の置ける人物ではあるだろう。
だが、生来の才能に裏打ちされた実力がそうさせたのか、非常に利己的で傲慢な一面があり――城下町の住民からはいたく嫌われているらしい。
それだけなら大した問題ではないのだが、近頃はその背景を利用して女性兵士やメイドに手を出したり、他者の妻を寝取るようなことまでしている噂もあるのだ。
仮にその噂が事実だったとするなら……これ以上増長してしまう前に、どこかで手を打たなければならない。
――なにより、予感があったのだ。
彼をこのまま行かせてはならない、という予感が。
「ふっざけないで! 今まで私達が集めた情報を横取りしてきたくせに、今さらそんな――!」
「――中尉殿。確かに戦力とするには心許ないかも知れませんが、俺達には連中と戦ってきた分だけの経験値がある。何かのお役には立てると思いますぜ」
「フン、何を言い出すのかと思えば。ジェリバン元帥の誘いを蹴って保安官などに成り下がった貴様に、今さらどうこう言われる筋合いなどないわ! 『救済の超機龍』だか何だか知らんが、権威を持たない貴様の言い分などクソ程の価値もないのだぞ!」
ルナイガンは龍太の顔に唾を吐きかけると、踵を返して部下と共に詰所を立ち去って行く。
慌ててハンカチで龍太の顔を拭くジェナを一瞥し、彼は高笑いと共に姿を消すのだった。
「とにかく、忠告はしておいた。足手まといになって恥を晒したくなければ、今後は大人しくしていることだ!」
「そうそう、あとは軍人に任せときな!」
「あばよ町民の味方の保安官さん! ギャハハハハ!」
その皮肉たっぷりの言葉遣いに、ジェナは激昂し何か投げつけてやろうと、花瓶に手を伸ばす。
しかし、その直前に龍太の右手に掴まれ、阻止されてしまった。
「先輩っ!」
「そんなことしたってしょうがないさ、ああいう連中には」
「だけどっ……!」
「……」
悔しげに唇を噛み締め、拳を握りしめるジェナ。その姿を見守りながら、龍太はルナイガン達が立ち去った後の光景に視線を移す。
(さて……ルナイガン中尉には悪いが、勝手に動かさせて貰うかな。こちとら、もう誰も死なせないと決めてるんでね)
胸中で決意を固める、その拳もまた――新たなる戦いを予感し、武者震いを始めていた。
――そして、時を同じくして。
「……」
とある牢獄に幽閉された一人の男が、何かに導かれるかのように立ち上がる。
虚ろな眼で天井を見上げるその姿は、さながら廃
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