第235話 二人の予感
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どという異名まで付き纏う今となっては、色眼鏡で自分を見ない国民はいないと言っていい。
結果として伊葉和雅の政策のおかげで暮らしが改善されているため、日本に対してそこまで反発していない人もいるにはいるが――やはり、過去の虐殺に根付いた恐れと恨みは、まだ根深いのだろう。
それでも、龍太がダスカリアン王国に来た時よりは遥かに改善された方である。
彼がこの国に来て間もない頃は、彼が道を歩くだけで物を投げつける人が後を絶たなかったのだ。
二年前、武器密売シンジケートとの戦いのさなか、逃げ遅れた民間人を庇って迫撃砲に直撃し――左腕を失ったという逸話が残っていなければ、今もそんな状況が続いていたのかも知れない。
「ふんふふーん……あ、イチレンジ先輩。コーヒーおかわり」
「はいよー」
――否。
その民間人が自分を追って保安官となり、町の人々にその活躍を語るようなことをしなければ、確実に今も龍太は物を投げられながら人々を守る戦いに臨んでいただろう。
瀧上凱樹により両親を失って以来、日本人を憎み続けてきた彼女が、今は自分と同じ保安官として働いている。その不思議さに頬を緩めつつ、龍太はコーヒーカップを手に取り――
「失礼する!」
――おかわりを入れに向かおうとした、その時。
乱暴に開けられた扉から、迷彩服とベレー帽に身を固めた屈強な男達が、所狭しとこの詰所に上がり込んで来るのだった。
紛れもない――ダスカリアン王国国防軍である。しかも男性が少ないダスカリアン王国としては貴重な、男性兵士であった。
「……ふっ、相変わらず汚らしい詰所だな、まるで豚小屋だ。まぁ、二人しか働き手がいないんじゃあしょうがない」
「……ちょっと、ルナイガン中尉! いきなり上がり込んで言うことがそれ!?」
精悍な目鼻立ち。褐色の肌に切り揃えられた金髪。そして鎧の如く鍛え抜かれた筋肉と長身。
二十一歳にして小隊長に登り詰めた国防軍中尉マックス・ルナイガンは、まさしく軍人として相応しい体格を備えていた。ジェナに下卑た笑みを浮かべている取り巻きの兵士達も、彼に劣らない体躯の持ち主である。
「……はて、栄えある国防軍の中尉様がどうしてこのようなところへ?」
「醜悪な日本人に語る舌など持った覚えはない……が、まぁいいだろう。用件は単なる忠告だ。武器密売シンジケートの件からは手を引け」
「な、なんですって!?」
「当然のことだろう、何を驚くことがある。先日貴様らが捕縛した連中から、ボスの居所を突き止めることが出来た。これからは戦闘のプロである我々の仕事。町の人間と仲良く治安維持ごっこに興じるべき貴様らが、首を突っ込んでいい案件ではないのだ」
思わぬ進展。どうやら、長らく難航してきた武器密売シンジケートとの抗争も終
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