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フルメタル・アクションヒーローズ
第234話 伊葉和雅の償い
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「……誰かを心の底から信じる。それほど、言葉にすることは簡単でも実現するには難しい話はない。むしろ自分の命を懸けるより、何倍も難しい道のりなのだ」
「……」
「しかし、人は強くなれる。変わることもできる。今日の君に出来なかったことが、明日の君に出来ないという保証はないのだ」
「……伊葉、さんっ……!」
「今は出来なくても、構わんさ。いつか彼と再会するその時に、心からの笑顔を向けられれば……」

 そして、樋稟が耐え続けた声は。

「きっと彼も、君を信じて良かったと思うだろう」

 その言葉を受け、タガが外れたように漏れ始めて行く。

「……さて」

 樋稟のすすり泣く声を聞きながら、和雅は静かに席を立つ。
 もうじき、面会時間の終わりも近い。そろそろ、鉄格子の牢獄に帰る時間だ。

 彼はゆっくりと踵を返し――振り返ると、泣き腫らした顔を上げた彼女に、穏やかな微笑みで応えた。
 自分なら大丈夫だ、と励ますように。

「――私も、君の話を聞けて良かったと思っている。……ありがとう」
「……はい……」

 そして、そのやり取りを最後に。
 伊葉和雅の面会は、終了を迎えるのだった。

 ◇

 ――その後。

 再び鉄格子の牢に帰還した和雅を、一人の女が出迎える。
 向かいの牢に囚われたその女は、面会を終えて帰ってきた和雅を静かに見つめていた。

「……いいお話は聞けたのかしら?」
「ああ。ためになる話さ」

 その女囚――エルナ・ラドロイバーは、かつての所業からは考えられないほどの穏やかな面持ちで、和雅の瞳を見遣る。
 お互い、憑き物の落ちた顔だ。自身にとってのやるべきことを尽くした者達が、その果てに浮かべる表情だ。

「不思議ね……終わってみれば、こんなにもあっけなくて……儚い」
「……そういうものだ。それが、悪いことというわけでもなかろう」
「――そうかも知れないわ。あの日と変わらない空なのに……」

 その面持ちのまま、ラドロイバーは牢獄の窓から外へと視線を移す。そこには、月と星に彩られた夜空が広がっていた。

「硝煙のない空がこんなにも広いなんて、思いもしなかった……」
「今になって、気づくこともあるさ。人は、いつだって変わっていくものだ」

 魅入られるように夜空を見上げるラドロイバー。その様子を見守りながら、和雅は瞼を閉じて眠りに落ちていく。
 走り続けた人生の中で、安らぎを求めるかのように……。

「本当に、変わるものね……」

 その様を見届けるラドロイバーは、そう、ひとりごちるのだった。

 ◇

 ――海と砂漠を越えた、遥か遠く。荒々しい風が吹き抜ける砂上の道を、一人の男が進んでいた。
 その男を囲むように並び立つ小さな家々からは
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