140部分:第十一話 断ち切る剣その十四
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第十一話 断ち切る剣その十四
「人は限りがあるものだ。その力にもだ」
「それでその努力が実る日もわからない」
「その通りだ。時が来るのはわかるのは神だけだ」
この場合の神は一柱ではない。複数の、それこそ数えきれないだけの神がある。伊上は基督教徒ではない。それで一神とは考えないのだった。
「しかしそれでもだ」
「それでも?」
「その時が来ればだ」
その場合はだ。どうするかというのだった。
「動く。そして必ず成功までこぎつける」
「それが人のすることですね」
「そうなのだ。そしてわしは二人の言葉を受けた」
「そして協力されると」
「いいことだ。対立が終わり融和がはじまる」
その二つをだ。相反するものとして話すのだった。
「後はその融和を維持する努力を続けよう」
「そしてそれが実るのは」
「それがわかるのは最後の最後だ」
伊上はこう従者に話した。
「最後なのだ」
「最後といいますと」
「その二人での幸せが終わった時だ」
その時が何時かもだ。伊上は話した。
「その時なのだ」
「幸せが終わった時だ」
「つまりそれはだ。どちらかが亡くなった時だ」
かなりだ。具体的な話になった。
「その時だ」
「二人のその生活が終わる時ですか」
「そうだ。その時に終わる」
伊上は遠くを見て話すのだった。
「その時にだ」
「つまりそれまではわからないのですね」
「対立が終わるのはすぐにわかるが幸せが終わるのは中々わからない」
「そういうものですか」
「それが終わった時は後になってわかる」
遥か先、そこだというのだ。
「その時にだ」
「幸せはそういうものですか」
「そう思う。実際にだ」
「実際にですか」
「明治維新のあの苦しかった時だ」
諸外国の脅威に怯えこれから何を為すべきか迷い四苦八苦していた時代だ。大正ではもう遥かなだ。過去の話になってしまっていた。
その時代のことをだ。話しながらなのだった。思い出しての言葉だった。
「あの時代は確かに苦しかった」
「それでもですか」
「幸せだった」
伊上は懐かしむ目で話した。
「日本はただひたすら前を見ていればよかったのだから」
「今とはまた違った幸せの中にあったのですね」
「ただがむしゃらに動いて働いていた」
そうしていたというのだ。
「幸せになる為に。生きる為にな」
「それが幸せだったのですか」
「そう。それ自体が幸せだったのだ」
伊上は語った。
「それが今になってわかる」
「そうですね。思えば」
従者もだ。その時のことを思い出してだ。そうして言うのだった。
「あの頃は日本も幸せでした」
「私達もまた」
「まことに幸せでした」
二人で話していく。そのかつての頃のことをだ。
「今にして思
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