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フルメタル・アクションヒーローズ
エピローグ
第232話 矢村賀織の願い
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には、不安を塗り潰す期待の色が滲んでいた。

「おや、賀織君。おはよう」
「お義父さん、おはようございます!」
「ふふ、まだそう呼んでもらうには早い気もするが……まぁいい。今日は試験だろう、しっかり生徒達を見てあげなさい」
「了解しましたっ!」

 その明るさは、本人も知らぬうちに、周囲の人々に影響を与えているのだろうか。一煉寺宅の玄関から現れた大柄な男性……一煉寺龍拳も、彼女の笑顔に釣られるように穏やかな笑みを浮かべていた。

「さっきの賀織ちゃんか? ……ていうか親父ぃ、早く行かねぇと遅刻するぜ」
「あなたもでしょ、龍亮。ほらあなた、早くしないと」
「……ああ、そうだな」

 そうして走り去っていく彼女を見送る彼の後ろから、朝食を摂っていた妻と長男が現れた。その手には、トーストや目玉焼きを乗せた皿がある。

(……あんなにも純粋に、龍太の帰りを待てるとは……強い子だな。さて、あいつがちゃんと応えてやれればいいんだが……)

 一方。龍拳の胸中には、義理の娘と次男への想いが渦巻いていた。
 異国に身を投じた息子が、無事でいるか。彼女の愛に応えられるのか。父として、それを案じずにはいられなかったのである。

(彼女の愛情より守らねばならぬ正義は、ないと思え……龍太よ)

 どのような立場と責任を負おうとも、忘れてはならない愛情がある。息子が、それを理解しているのか――龍拳の気がかりは、そこにあるのだった。

 ――そして、少しばかりの時を経て。
 松霧高校を舞台にした「定期考査」という名の死闘に、幕が下ろされた。

「はい、そこまで!」
「ちょっともー! 賀織ちゃん手加減なさすぎィ!」
「出題範囲が意地悪すぎんよー! 賀織ちゃん!」
「出来とる奴はおるんやから、言い訳ナシ! 赤点は夏休み返上で先生と補習やから、覚悟しとき!」
「ゲェーッ! 賀織ちゃん怒りの夏期講習キタコレ!」

 生徒達から「賀織ちゃん」の愛称で親しまれている彼女に向けて、成績不良の男子達からの悲鳴があがる。
 鬼教師と巷で有名な賀織にとっては、実に見慣れた光景であった。

 その後、職員室での事務作業を終え――彼女は自身にとってはかけがえのない場所だった、ある部屋に足を運ぶ。
 そこは――白い塗装で清潔に管理された、部室棟の中にある一室。「着鎧甲冑部」の部室であった。
 定期考査の期間中ゆえ、部室は完全な無人であり――そこに佇む賀織は、静かな空間の中で物思いに耽っている。

「変わらんなぁ……ここは」

 白い壁に手を這わせ、賀織は懐かしむように微笑みを浮かべた。

 ――龍太達が卒業したのち、着鎧甲冑部は「ヒーローを養成する部活」から「ヒーローについて研究する部活」へとシフトしていった。
 着鎧甲冑
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