第231話 旅立ち
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
に出掛ける息子を見送る、母親のようだ。
「龍太様、ハンカチはお忘れでなくて?」
「……トイレに行きたかったら、早く済ませて」
「だああああ! お前ら俺を幾つだと思ってやがるぅうぅう!」
……ホントに母親のようだ。
卒業式を終えて早々の、この子供扱いはなんとからならないんかい?
「お兄様があなたの矯正に手を焼いたのもわかりますわね……全く」
「るせぇ! ……そういや茂さん、最近また忙しくなってるみたいだな」
「ええ。松霧町の復興事業、着鎧甲冑のシェア拡大――ダスカリアン王国へのG型配備の検討。救芽井エレクトロニクスとの共同事業においては、今が一番忙しい時期ですから」
「そんな時にわざわざ見送りに来させて、悪かったな」
「勘違いなさらないで下さる? ワタクシは自分がしたいことしかしませんのよ。ワタクシ、わがままな女ですから」
久水先輩は巨大な胸を張り、目を閉じてそっぽを向いてしまう。その頬は、ほのかに赤い。
……その高飛車な態度も面倒見のよさも、変わらないな。
「そうかい。じゃあ、わがままついでに最後まで見送ってもらおうかな」
「……初めから、そのつもりですわよ」
次いで、俺は鮎子と――その隣に立つ鮎美先生に視線を移す。
「じゃあ龍太君。向こうにいる剣一君とジェリバン将軍によろしく。ちゃんとお姫様を送ってあげるのよ?」
「わかってるって。少なくとも、怪我するような目には合わせないさ」
「……迷子にならない自信はないんだ?」
「やかましい!」
「……怪我しちゃいけないのは、先輩も一緒。自分も、ちゃんと守らなくちゃダメ……」
「――ああ、わかったよ。死なない程度には気を付けるさ」
やけに周りから心配されてるような気がするが……俺だって、今まで命を張って戦ってきたんだ。そう簡単に死ぬつもりはないさ。
周囲の憂慮を跳ね除けるように、内心でそう意気込んでいる頃。
ダウゥ姫は、矢村と対面していた。
異国の姫君を見送る彼女の腕の中には、小さく鳴いて主人を見つめるグレートイスカンダルの姿がある。
「じゃあな、グレートイスカンダル。いつかまた、会いに来るから」
「心配せんと行ってき。この子の面倒ならみちゃるけん、あんたはあんたの仕事を頑張るんやで」
「……ちぇっ、わかってるよそんなこと。カオリのくせに、いつまでも姉ちゃんヅラしちゃってさ。オレだってもう立派な王族なんだから、子供扱いすんなよ!」
「そーゆーとこ、ホントに龍太にそっくりやなぁ。子供やないって言うんなら、今度日本に来る時までに女らしくなりぃよ」
「う、うるせー! お前だけには言われたかねぇよ!」
相変わらずのやり取りだが、来日したばかりの頃とは比べ物にならないほどに雰囲気が柔らかくなっている。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ