第230話 新たなるステージへ
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「――だとしても。あなた方が国からの信頼を失っている現状に変わりはありません。今後の方針を宣言する前に、あなた方には信頼を取り戻すための誠意を見せて頂かなくてはなりません。そのためには、彼の協力が不可欠なのです」
「……それで、彼を――『救済の超機龍』を、ダスカリアンに送ると言うのですか」
両者の視線が、俺に向かう。これから始まる宣告を前に、俺は拳を握り締めた。
そして、そんな俺を励ますように、矢村の小さな掌が俺の拳を覆う。
「はい。あなた方の思惑がどうであれ、彼の力が脅威的であることに変わりはありません。しかし、その力をダスカリアン王国との国交に活かして下さるのであれば――偉大なヒーローとして、彼をこの国へ迎え入れることもできましょう」
「まさか……彼の強さを背景に、ダスカリアン王国を事実上の属国にするつもりですか」
「……いえいえ、そのような非道なことは決してさせません。彼はこの国から生まれた、大切なヒーローなのですから。我々が彼に託したい任務は、より人道的な正義に基づいたものです」
救芽井の追及をかわしながら、牛居さんは愛想笑いを浮かべて俺を見遣る。……額面通りには、受け取れない任務らしいな。
「彼にはダスカリアン王国に赴き、同国内で活動している武器密売シンジケートを無力化して頂きたい」
「……!」
「ジェリバン将軍の監視を掻い潜り、二十年以上に渡って国内外で武器を密売しているその組織……実は、着鎧甲冑を狙っているという情報がありましてね。先日、技術を奪うための人質として、現地にいた日本人が狙われるという事件があったのです」
「なんですって!」
「幸い、日本に対して好意的なダスカリアン兵士によって救助され、事なきを得たようですが……今のダスカリアン王国内には、日本に不信を抱く国民も、兵士も多い。このままでは、レスキューヒーローを創出していく者としての沽券に関わるでしょう?」
「……」
「我々としても、国民を守るための最善を尽くしたいのです。それに、この任務が成功すれば救芽井エレクトロニクスは、ヒーローとしての着鎧甲冑の有用性をさらに広められる上、ダスカリアン王国も悩みの種を一つ解消することが出来る。国境を問わず人々の幸せを守る、まさにヒーローに相応しい大命であるとは思いませんか?」
武器密売シンジケートの退治。確かに、ダスカリアン王国のためにも日本のためにも必要な任務だが……日本政府の狙いがそれだけとは思えない。
恐らくはこれを足掛かりとしてダスカリアン王国に恩を売り、救芽井が危惧した通りか、それに近しい体制に誘導しようとしているのだろう。
……だが。だが、しかし。
「ジェリバン将軍。その武器密売シンジケートってのは、ホントにそんなことをやりかねない連中なのか」
「……
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