第228話 不思議な感慨
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
! ローソクローソク!」
「あ、ああ……!」
俺はうまく思考が纏まらないまま、救芽井に促され――食卓に並べられたご馳走の中央を飾る、白いワンホールケーキの前に立たされた。目の前には、十八本の蝋燭。
「ハッピバースデー、トゥーユー!」
「ハッピバースデー、トゥー、ユーっ!」
直後、俺の周りではお約束の歌と手拍子が始まっていた。といっても歌っているのは着鎧甲冑部の女性陣やダウゥ姫くらいで、あとはほぼ手拍子のみとなっている。
しかし、問題はそんなことじゃない。この大して広くもない家に集まったメンツだ。
着鎧甲冑部の面々に、ジェリバン将軍とダウゥ姫、古我知さんに茂さん、久水家の先代夫婦に救芽井甲侍郎夫妻、さらには矢村夫妻までが、この場に集結していたのである。
「ハッピバースデー、ディア、龍太!」
「ハッピバースデー、トゥーユー!」
冷静に考え――なくとも凄まじ過ぎる顔ぶれのはずなのだが、俺の正面で満面の笑みを浮かべ、手拍子に興じている俺の家族は相変わらずの佇まいだった。
こんな大物ぞろいのサプライズパーティーが、まさか俺ん家の中で始まっちまうなんて……わからねぇもんだな、世の中ってのは。
「……このところ、伊葉さんのことでちょっと沈んでたみたいだから。――それに、ちゃんとお祝いはしてあげたかったからね。おめでとう、龍太君」
「――ああ、ありがとう。皆」
……それに、不思議なもんだ。
あの時は、誕生日のことなんてすっかり忘れていたのに。
今は、どんな時よりも強く――戦いが終わったことを実感している。
――あの平和な町が、戻ってきたのだと。
蝋燭の火を全て吹き消した時。
俺は、その思いがさらに強くなっていることに、改めて気づかされたのだった。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ