第228話 不思議な感慨
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を苦しめるような力が世に出ることはないだろう。
ただ鮎美さん曰く、二段着鎧で初めて実現した飛行能力については利用価値があるらしく、人工知能による完全自律システムを用いた実用化を目指すつもりのようだ。
皆、今回の戦いで受けた痛みを乗り越えて、その先に進もうとしている。兄貴も無事に退院したことだし、俺も自分に出来ることをしなくちゃな!
……ってところだったんだけどな……。
「午後六時までパトロールして来い……って、何なんだよもう……」
復興した校舎の屋上から、町中を見渡し――俺は本日最大のため息を全力放射する。
確かに「救済の超機龍」としての大切な務めではあるんだけどな……。
試験終わりに自宅で美味いもんでも喰おうとした矢先、救芽井からの「午後六時までパトロールして来なさい! それまで帰宅厳禁!」とかいう謎の指令が来たんだもんなぁ。
おかげで腹が減ってしょうがない……。矢村に何か作って貰おうかと思ったら、あいつも家にいなかったし……。
――大体! 何が悲しくて、戦いが終わって早々に腹ペコでパトロールせにゃならんのだ! どんな事情があってのことかは知らんが、後であいつのおやつに大嫌いなマスタードでもぶっかけてやる!
「……くぅ」
――などという情けない怒りに任せ、青空に向けて拳を振り上げた途端。突如響き渡る腹の虫にエネルギーを奪われ、俺はその場で膝をついてしまった。
いかん……怒ると余計に腹が減る。ああ……早く六時来ねぇかなぁ……。
と、俺はお預けを食らった犬の心境で快晴の空を見上げる。
しかし不思議なもので、時間というものは意識すればするほど長く感じてしまうものらしい。ラドロイバーと戦っていた時はあっという間に夜中になって、あっという間に夜が明けていたのに――今は、一分一秒が永遠のように長い。
時間を忘れられたのは、道行く生徒や商店街のおっちゃんやおばちゃんに手を振っている時くらいだ。あとは――
「あっ、『救済の超機龍』さん! パトロールお疲れ様です! いや〜聞いて下さいよ、実は本官の知り合いの龍太君って男の子がですね、賀織ちゃんって女の子とこないだ公園でイケないアバンチュールを……」
「根も葉もない噂の言いふらしはイケませんなァアァアアァアアァアッ!?」
――帰ってきても相変わらずなお巡りさんを追い回している間くらいか。
いや、ホントにイケないアバンチュールなんてしてないし。ホントだし。復興作業の合間に、ちょっとこないだのキスの続きしただけだし!
……ま、こんな騒がしい日常でもいざ失うと寂しいってことは、今回の戦いでよくわかったからな。
伊葉さんの想いに応えるためにも、これからはその有り難みを忘れないよう心掛けて――って。
「な
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