第227話 俺とお前の最終決戦
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俺達はやがて、示し合わせたように身体を半回転させ――全速力のバーニアで急降下に突入する。ラドロイバーを、追って。
もうバーニアを噴かせるエネルギーはおろか、着鎧を維持するだけの力も残っていなかったらしい。
彼女の身体からは、鎧や武器が次々と剥がれ落ちていた。やがて、彼女の身体はボディスーツのみの丸腰と化していく。
……まるで、今まで彼女に纏わり付いていた憑き物が落ちて行くかのようだった。
「届ッ……けぇええぇえッ!」
『届ッ……けぇええぇえッ!』
そして――視界に広がる松霧町が大きくなり……採石場の地表が目に映るところまで来た時。
俺達はついに、彼女の元へ辿り着くのだった。
「よっ……と!」
「……」
俺は脹脛のバーニアで体勢を維持しつつ、ラドロイバーをお姫様抱っこの格好で確保する。彼女の意識はハッキリしているようだったが――その目からは、今までのような殺気は失われていた。
まるで、何かを懐かしむような……夢を見ているような。そんな、不思議な色の瞳だったのだ。
「……そうか。あの日の、夢の中で……悪い人から皆を守ってくれた……天使様は……」
「……?」
「私では、なくて……」
彼女はうわ言で何かを呟き、力無く俺の頬を撫でる。その表情には、どこか温かみさえ感じられた。
「ヨシエさん……私、やっと……」
そして、その呟きを最後に――彼女の意識は眠りについていく。瞼を閉じたその顔は、激闘の後とは思えない程に安らかなものだった。
「……」
『……先輩。ボク達、勝ったんだよね。きっと、正しかったんだよね』
「――そいつは、今にわかるさ」
その姿に、戸惑いを隠せなかったのだろう。鮎子は確かめるように、俺に問いかけてきた。
……確かに、勝ったのは俺達だ。しかし、勝った方が全部正しいってんなら、それはラドロイバーの理屈になる。
俺達が正しかったのかどうかは……着鎧甲冑が兵器にならなかった世界で生きてる、他の連中が決めてくれるさ。だからきっと――今にわかる。
少なくとも、俺達なりの正義に力が伴っていたことだけは……間違いない、と見ていいだろうよ。
「……さ、帰ろう。皆が待ってる!」
『……うん!』
地上から手を振り、涙ながらの笑顔で出迎えている救芽井達を見れば――それくらいは信じたくなるってもんだ。
「ただいま、皆」
彼女達に向け、俺が小さく呟く頃。
採石場の岩山の向こうでは――七月八日の日の出が、鮮やかに煌めいていた。
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