第226話 唸る鎧
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」
「そんなわけ、ないじゃない。あなたの好きにはさせないと――そう、言いに来たのよ!」
ラドロイバーの苛立った呟きに応じるように、気高い叫びが採石場に響き渡る。
この声――救芽井か!? 無茶だ、ラドロイバーはさらに強くなってるんだぞ!
「勝算もなく、ただ愚直に攻め入るその姿勢――それがかの有名なカミカゼというものですか?」
「違うわ。私は、犠牲になんてならない。勝算なら、ちゃんとあるもの」
そんな俺の心の叫びなど、伝わるはずもなく――俺が血反吐を吐きながら身を起こした頃には、既に「救済の先駆者」と「呪詛の後継妹」が対峙していた。
「……きゅ、う……め……!」
「――私なら、大丈夫よ。見てて、龍太君……!」
戦力差は絶望的。個人のスキルでどうにか覆せるような次元じゃない。それがわからない彼女じゃないだろうに!
「そう――それなら、拝見させて頂きましょうか。今後の参考のためにも」
「残念だけど……あなたの戦いに『今後』はないわッ!」
その問答を合図にして――二人の戦いが始まってしまう。ラドロイバーがレーザー銃を構える瞬間、救芽井は先程と同じサイズの岩を拾い――彼女の周囲を周るように走り始める。
その瞬発力とスピードは――今までの「救済の先駆者」とは比べものにならない速さだった。
――よく見ると、救芽井の身体を覆う人工筋肉が、いつもより少しだけ膨れている。身体能力を少しでも伸ばすために、オーバーヒートで中身を焼かれないギリギリのところまで、電力供給を高めているのか……。
恐らく、他の「救済の龍勇者」からバッテリーを掻き集めて強化したのだろうが……あのやり方によるパワーアップは一時的なもので、決して長くは持たない。
しかも、使ったあとの反動も大きいことから、今の着鎧甲冑運用ガイドラインでは非常時のみ許される「最終手段」とされている。
本来なら、瓦礫などで閉鎖された空間から強引に脱出するための機構だ。戦いに使うなら、近接格闘による短期決戦しかない。
――だが、レーザー銃で防衛ラインを固めているラドロイバーが相手では、そこまで持ち込むのは困難。下手すりゃ、近づく前にバッテリー切れになったところを蜂の巣――だ。
彼女がそれをわかっていないはずがない。一体、彼女は何が狙いでこんな無謀な戦いを……?
「……そこッ!」
「そんな石ころで、この装甲がどうにかなると?」
救芽井は生体センサーの処理が追いつかない程の速さで動き――完全に死角に入ったところで、持っていた岩を投げ付ける。
だが、投擲された岩がラドロイバーに届く頃には、もう生体センサーも反応していたのだろう。彼女は背を向けたまま、右腕で払いのけるように岩を粉砕してしまった。
「……く」
し
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