暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第224話 二段着鎧対呪装着鎧
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、お前の信念があったんだろうな。それに力が全てだという理屈なら、俺にもわかる。どんな理屈を並べたって、力で踏み倒されちゃ損しかないってのは事実だもんな」
「……それを踏まえてなお、甘い理想に縋るのですか」
「踏まえてるからこそ、そんな甘い理想を守ってやる誰かがいなくちゃならないんだよ。俺は、そのつもりで戦って行くつもりだぜ」

 関節を責められていても、彼女の抑揚のない口調に変化はない。まるで、吊上捕が効いていないような……いや、そんなはずはない。確かに関節は完璧に決まって――

「そうですか。やはりあなたは、排除すべき障害のようです」

 ――ッ!?
 何だ……? ラドロイバーが足のバーニアを使って、強引に拘束を外そうとしている……!?
 そんな無理な外し方をしたら、肩関節が……!

「な、何をッ……!?」
『先輩ッ! この女、まさかッ……!』
「甘い理想の守り手など、悪戯に寿命を削るだけの不要な労力でしかありません。あなたが纏う、その強き力は――」

 俺の配慮など気にも留めず、彼女は無理な動きで吊上捕から逃れようとする。
 そして。

 ゴキン、という鈍い音と共に。

「――そんなことのために、あるべきではない」

 俺の拘束から脱出し、一瞬にして十数メートルの距離まで後退してしまった。

『先輩の拘束から逃れるために、自分から関節を……!?』
「な、なんて奴だ……!」

 その行動から滲み出る狂気と、脱臼してぶらりと垂れ下がった彼女の腕を目の当たりにして――俺達は、目の前に存在する大敵の本質を垣間見る。
 彼女は自身の目的を遂行するためには、あらゆる犠牲も厭わない。――それは、自分自身ですら例外ではなかったのだと。

「肩関節を抑えた程度で、勝利した気になるその甘さ。どれほど優れた力に恵まれていても……その甘さがある限り、あなたに勝機は訪れないでしょう」
「な、に……!」
「……とはいえ、私をここまで追い込んだ実力は認める他ありません。その奮闘に敬意を表し――」

 しかも彼女は、垂れ下がった腕を無事な方の腕で掴み。
 平然とした声色のまま――自力で肩を整復してしまったのだ。
 骨と骨が軋み合う……耳を覆うような音を響かせて。

「――その甘さ、吹き飛ばして差し上げます」

 刹那。
 兜の奥に窺えるラドロイバーの瞳に――鋭利に研ぎ澄まされた「殺意」が宿る。

「……ッ!」
『――先輩ッ!』

 その圧倒的な殺気を浴びた俺の精神は、あの女に近づいてはならないと本能に訴えた。
 だが――彼女の動きはそれよりも速い。

 鮎子が叫びを上げた頃には既に――両肩のミサイルランチャーから、無数の弾頭が撃ち放たれていたのだ。

「どんな願いも、想いも――」

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ