第224話 二段着鎧対呪装着鎧
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、お前の信念があったんだろうな。それに力が全てだという理屈なら、俺にもわかる。どんな理屈を並べたって、力で踏み倒されちゃ損しかないってのは事実だもんな」
「……それを踏まえてなお、甘い理想に縋るのですか」
「踏まえてるからこそ、そんな甘い理想を守ってやる誰かがいなくちゃならないんだよ。俺は、そのつもりで戦って行くつもりだぜ」
関節を責められていても、彼女の抑揚のない口調に変化はない。まるで、吊上捕が効いていないような……いや、そんなはずはない。確かに関節は完璧に決まって――
「そうですか。やはりあなたは、排除すべき障害のようです」
――ッ!?
何だ……? ラドロイバーが足のバーニアを使って、強引に拘束を外そうとしている……!?
そんな無理な外し方をしたら、肩関節が……!
「な、何をッ……!?」
『先輩ッ! この女、まさかッ……!』
「甘い理想の守り手など、悪戯に寿命を削るだけの不要な労力でしかありません。あなたが纏う、その強き力は――」
俺の配慮など気にも留めず、彼女は無理な動きで吊上捕から逃れようとする。
そして。
ゴキン、という鈍い音と共に。
「――そんなことのために、あるべきではない」
俺の拘束から脱出し、一瞬にして十数メートルの距離まで後退してしまった。
『先輩の拘束から逃れるために、自分から関節を……!?』
「な、なんて奴だ……!」
その行動から滲み出る狂気と、脱臼してぶらりと垂れ下がった彼女の腕を目の当たりにして――俺達は、目の前に存在する大敵の本質を垣間見る。
彼女は自身の目的を遂行するためには、あらゆる犠牲も厭わない。――それは、自分自身ですら例外ではなかったのだと。
「肩関節を抑えた程度で、勝利した気になるその甘さ。どれほど優れた力に恵まれていても……その甘さがある限り、あなたに勝機は訪れないでしょう」
「な、に……!」
「……とはいえ、私をここまで追い込んだ実力は認める他ありません。その奮闘に敬意を表し――」
しかも彼女は、垂れ下がった腕を無事な方の腕で掴み。
平然とした声色のまま――自力で肩を整復してしまったのだ。
骨と骨が軋み合う……耳を覆うような音を響かせて。
「――その甘さ、吹き飛ばして差し上げます」
刹那。
兜の奥に窺えるラドロイバーの瞳に――鋭利に研ぎ澄まされた「殺意」が宿る。
「……ッ!」
『――先輩ッ!』
その圧倒的な殺気を浴びた俺の精神は、あの女に近づいてはならないと本能に訴えた。
だが――彼女の動きはそれよりも速い。
鮎子が叫びを上げた頃には既に――両肩のミサイルランチャーから、無数の弾頭が撃ち放たれていたのだ。
「どんな願いも、想いも――」
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