第223話 黒曜の兜
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屈しない『力』を手にする――それのみが、私の『勝利』なのですから」
「……へぇ。俺達はその通過点でしかないってことか。大きく出やがったな」
「あるがままの事実を述べているだけですよ」
俺達にとっては、今日ここでラドロイバーを倒すことが勝利。
だが彼女にとっては着鎧甲冑の入手こそが勝利であり、俺達二人はその途中にある障害の一つでしかない――そういうことだってのか。
「――とはいえ、あなた方が最大の障害であることもまた、揺るがない事実。先程の立ち回りは、お見事でした」
「……」
「あれほどの性能を今の段階から発揮できるのであれば――より兵器としての高い効果も期待出来るでしょう。こちらが、ポテンシャルを出し惜しみすることもありません」
「……今では手加減してやってた。要は、そう言いたいんだろ」
「ええ。事実ゆえ――仕方のないことですが」
その時。
彼女のコートの裏側から、周囲一帯を飲み込む勢いで蒸気が噴き出してくる。
「……ッ!」
『先輩、あれは……ッ!?』
俺は思わず片腕で視界を遮り――僅かに見えた上空の「異変」に、息を飲む。
その「異変」に、鮎子もわずかにたじろいでいる様子だった。
つい先程まで、ラドロイバーが身に纏っていた暗黒のコートは……彼女の頭上に、蒸気を噴いて舞い上がっていたのである。
その真下に立つ彼女の全身はコートと同じ、漆黒の色を湛えたボディスーツで覆われていた。ぴっちりと肢体に張り付き、優美なラインを描くスーツのラインは女性らしさを残してはいるが、その節々に取り付けられた武装が見る者に戦慄を与えている。
手榴弾、手甲のレーザー光線銃、コンバットナイフ、自動拳銃――そして両足の裏に取り付けられた、小型ジェット。どれも、彼女が持てば手が付けられなくなるような物ばかりだ。
それに、あの両足のジェット……。足裏から直接火を噴いているってことは、あの足は生身ではないのだろう。思えば、さっきの太刀合わせで足を掴んだ時も、やけに硬く感じた気がする。
恐らく、古我知さんのような電動義肢も取り入れて――
『先輩、コートが!』
「……なッ!?」
――という俺の思考を、鮎子の一言が断ち切った。
蒸気を噴いて飛び上がっていたコートが――なんと内側を曝け出すように裏返ってしまったのだ。
その瞬間を目の当たりにして、俺はようやく古我知さんが残した言葉を実感する。
漆黒のコートは――その裏に、更なる増加装甲を隠していたのだ。
「あれは……!」
『……コートという形状自体が、増加装甲とボディスーツを隠すためのフェイクだったんだ……!』
そう、まさに古我知さんが言った通り。
コートの下にある武装が全てではなく――むしろ、コート
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