第220話 残された時間
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った。一体、彼に何が起きてしまったんだ……!?
『……君も、せいぜい後悔しないようにすることだ』
彼の真意を問う暇もなく、牛居さんとの通信もそこで途切れてしまった。
焼け付くような夕陽が沈み、夜の帳が降りる頃。暗転したままの画面を見つめる俺を乗せて、「超機龍の鉄馬」は松霧町に到着しようとしていた。
なぜ……どうして……伊葉さんは、あんなことを……。
『国家反逆の罪を、肩代わりしたのよ――彼は』
「――ッ!」
その時。音信不通となっていた会話機能が突如蘇り――鮎美先生の声がスピーカーから飛び出してくる。その不意打ちに、俺は思わず仰け反ってしまった。
「肩代わり、だって……!?」
『ええ。あなたを利用してラドロイバーを捕縛し、彼女の技術を手土産に恩恵に預かる。それが真の狙いというシナリオを翳して、この件の罪を一人で被るつもりなのよ』
「そんな……」
『もちろん、そんなものは方便だってこと、向こうだってお見通しよ。だけど官邸から繋がってる特別回線であんなことを言われた以上、向こうも国家の体裁として動かないわけには行かない。結果、彼の拘束に政府が動いている間に、あなたがラドロイバーと戦える、というわけ』
――つまり伊葉さんは、自分自身を悪役に仕立て上げることで、スケープゴートの役を買って出たということなのか。
そんなことをしたら……!
『……当然、彼は積み上げてきた全てを失うわ。その全てを、あなたが使う僅かな時間に懸けたのよ、彼は』
「伊葉さん……」
『彼は、私に話したの。あの日の決闘に敗れ、あなたに頼るしかなくなった瞬間から、自分は償い難い罪を背負っていたんだと……』
「……」
『ダスカリアンの未来は、文字通りあなたに懸ってるのよ。龍太君。――ここで逃げ出す、あなたじゃないわよね』
伊葉さんの行く末を案じる俺に、鮎美先生は焚き付けるように声を掛ける。――これは出てくる答えを、初めから知っている人間の声だ。
「――当然。なんとしても、繋いで見せる! 行こう、鮎子!」
『……うんっ!』
牛居さんの妨害から解放された鮎子の返事が、弾けるように響き渡る。
……俺はここにたどり着くまで、色んなものを、色んな思いを犠牲にしてきた。もう、レスキューヒーローを語れる体裁なんて、毛ほども残っちゃいない。
それでも、せめて。今、生きている命が未来に繋がるように――今の俺に出来る精一杯を、全うしたい。
それだけがきっと……俺に残された、最後の正義だから。
「――見えた!」
映像と同じ光景が、視界に広がっていく。
砕かれた町並み、住宅街の焼け跡。鎮火された校舎。
――そして、ナイターに照らされたグラウンドと――
「……龍太君ッ!」
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