第219話 迫る死闘と影
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『ぐ……ぅ、ぬぅあぁあァァッ……!』
その様を見下ろすラドロイバーの声色は、再び落ち着きを取り戻したのか穏やかなものになっていた。
俯くように顔を伏せ、脱力するように落ちていく。電磁警棒と銃身を握る腕も、するりとラドロイバーの拘束から撫でるように抜け落ちてしまった。
……くッ! 死んだら……死んだら、何にもならないんだぞ、茂さん……!
もういい、もうすぐ着く、もうすぐそこにたどり着くから……もう立ち上がるんじゃねぇ、あとは俺が――!
『――まだ、終わりだと思うな……!』
――刹那。
膝から崩れ落ちて行く、「龍を統べる者」のマスクの眼が――蒼く煌めいた。
消えかけた蝋燭の火が、最後の瞬間に燃え上がるように。
『……ッ!?』
『――久水流銃剣術、秘技』
次いで、真下に崩れ落ちて行く姿勢から――弧を描く軌道で、茂さんの上体が再び浮き上がる。急降下した飛行機が、体勢を持ち直して急上昇するかのようだった。
そうして身体を上昇させながら、虎流撃の軌道で銃身を振るう勢いに流されるかのように、彼自身の身体も半回転を起こしていく。
……まさかこれは、虎流撃からさらに派生した技なのかッ……!?
『――獅流撃』
俺がその結論にたどり着く瞬間。茂さんの呟きと共に――
膝から崩れて行く姿勢から、アッパーのように下から突き上げる動きで放った、強力な飛び後ろ回し蹴りが――ラドロイバーの土手っ腹に炸裂した。
――恐らくは、蛇流撃も虎流撃も受け切られた時のために作られた、銃剣術の理から外れた「秘技」。
膝から落ちて力尽きたと思わせ、虎流撃の流れが生む遠心力を利用して放つ、最後の一撃必殺なのだろう。
下から抉り込むような蹴りを受け、ラドロイバーは数歩後ずさる。彼女の防御力がなければ、今の一撃で確実に終わっていた。
まさに、眠りから醒めた獅子の猛襲。これを受けて大して効いてないのなら、俺が到着しても勝ち目がないかも知れん……。
頼む。この一撃だけは、通用しててくれ……!
『……』
――そんな俺の願いは、最悪な形で叶えられてしまった。
腹を撫で、再び直立不動の姿勢に戻った彼女からは……慢心の色が見えない。
その眼は、摘み取るべき危険な芽を見つめる狩人そのもの。茂さんを外敵として認めた、戦士の貌であった。
『ぐっ……ぅ、ぁ……』
『し、茂さんっ! 逃げてぇっ!』
『茂君ッ! 早く逃げるんだァッ!』
一方、茂さんは今度こそ力尽きたのか、膝をついて身動きが取れない状況になっていた。救芽井や古我知さんが撤退するよう呼びかけているが、もはや逃げるどころか返事することさえ叶わない状態だ。
……
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