第218話 金と銀の剣舞
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犠牲を払っても……ダメージ一つ、まともに通らないなんて。
『……ま、だだ。まだ、何も終わっては……! ゴ、オァッ!』
『――立ち上がらない方が身のためですよ。肋骨も何本かは折れているはずです』
なおも立ち上がる茂さんだったが、身体はかなり限界に近いらしい。マスクの隙間から、吐き出された鮮血がこぼれ出ている。
……無茶だ。これ以上、どうする気なんだ茂さん!
『し……げる、君……。もう、それ以上戦っては……!』
『ふん……! 四肢をもがれた貴様にだけは、言われたくはない、わッ……』
辛うじて意識を保っている古我知さんも、ボロボロの状態だ。こちらは電動義肢の全てを破壊され、もはや戦うどころか立ち上がることさえできない。
『……あなた方の想い、しかと拝見しました。もう十分でしょう。いたずらに、命を消費することもありません』
『ぬかせ……! ここで貴様を野放しにすれば、違う命が犠牲として消費されるだけのこと! それを防げぬ者が、着鎧甲冑を語るわけには行かぬ! ――う、ぐッ!』
『――何がそこまで、あなたを駆り立てるというのです』
膝から崩れかけ、銃剣を杖に辛うじて両の足で立つ茂さん。そんな彼の姿に、ラドロイバーは少しばかり眉をひそめていた。
そう。あの無慈悲にして無表情のラドロイバーが、表情を変えたのだ。
『……我が久水家は、長きに渡り日本の財政に携わってきた。それはすなわち、民の生活――幸せを預かるということ。力を持つがゆえに課せられる責任を、負うということだ』
『……』
『ワガハイは、そんな自分の生家が好きではなかった。趣味の西洋にかぶれ、気ままに生きる。それでいいとさえ……』
そんな彼女に視線を合わせるように、茂さんも顔を上げる。その仮面の奥に燻る瞳は、研ぎ澄まされた剣のように鋭く――揺るぎない。
『だが……ワガハイの最愛の妹が、愛する男が正義に狂って行く苦しみに苛まれていた時。気づかされたのだ。生家を嫌うあまり久水流という「力」を持つことに手を抜いたがために、守るべき家族の苦しみにすら目を背けていた……己の醜さにな』
『し、茂君……』
『――この頭はかつて、妹を守るという誓いの証だった。そして今は久水流銃剣術を極め、民の幸せを守り抜くと梢に約束した、オレ自身の成り立ちの全てだァッ!』
そして、雄叫びが上がる瞬間。
茂さんは己を奮い立たせるようにサムライダイトを振り上げ――完全に両足のみで立ち上がって見せた。
『家族と……家族が守る民のため、ですか。ダスカリアンの民にまで手を差し伸べるとは、随分と寛大な方のようですね』
『それが愚かに見えるのならば、好きなように申せ。民の命のために戦う者の強さ――』
そして、冷ややかな口調の彼女に銃剣の先を向け――
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