第216話 無謀な乱入者
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には、既に彼の着鎧は解除されていた。
『変形した銃弾を受けた人間の身体は、普通の銃創を受けた時よりも不規則に肉を抉られる。苦痛の激しさも――ひとしおでしょう』
集音マイクは、彼女の非情な呟きを克明に聞き取っていた。
着鎧が解除されるということ。その原因は、いくつかある。バッテリー切れ、爆発反応装甲としての機能。――あるいは、死。
『レスキューカッツェ! ただちに治療だッ!』
『了解ッ! オラオラてめぇら、ボサッとしてんじゃねぇえッ!』
状況をいち早く飲み込んだ茂さんが、パニックを掻き消すように怒号を上げる。次いで、フラヴィさんの叫びが隊員達に広がる恐怖を抑え込んだ。
『急所は外れていますが、中の骨が衝撃で折れてます! とにかく固定して、安全な場所に移さないと!』
『見りゃわかんだよバッキャロォ! 夏、さっさと病院前まで連れて行け! 絶対に死なせるんじゃねぇぞ!』
『りょ、了解っ!』
フラヴィさんの叱責を受けた西条さんが、大慌てで同僚達と共に撃たれた隊員を搬送していく。その光景を背後にして、将軍は一層激しく拳を握り締めていた。
『貴様……! 許せん、許せんぞッ!』
『許さないから、どうだと仰るのですか。感情でどうにかなる戦力差でもないでしょう』
そんな将軍に対し、ラドロイバーは一向に態度を崩さない。しかし、そうであってもおかしくない程の強さを持っているのは確かだ。
彼女は着鎧甲冑を貫通する勢いで、ガトリングの銃弾を「指で」弾き飛ばしていた。恐らくは、それほどの膂力を発揮するパワードスーツを、あのコートの下に着込んでいるのだろう。
将軍の言うとおり、「銅殻勇鎧」を作ったのがラドロイバーだとするなら――その流れを組んだ上位互換って可能性もある。
将軍自身の力だけでは、埋めきれない差があっても不思議じゃない。
……それでも、戦うのか。あんたは。
『――将軍といえど、所詮は教養に欠ける途上国の成り上がり者、ですか』
『その程度であろうとも――貴様に一矢報いることは出来るッ!』
将軍は再び拳を振り上げ、ラドロイバーに挑みかかって行く。そんな彼を見つめる彼女の瞳には、僅かに苛立ちの色が漂っていた。
やがて双方が激突する瞬間。
将軍の拳は、ラドロイバーの髪を掠め――
『あ、がッ――!』
――空を切り裂く。彼女の膝が将軍の鳩尾に突き刺さったのは、その直前のことであった。
『――沈みなさい』
そして、彼女の前で膝をついた将軍の延髄に、漆黒の肘が落ちる。鈍い音を響かせたその一撃は、将軍の意識を一瞬で刈り取っていた。
あまりにも圧倒的。あまりにも絶望的。
その刹那の攻防を目の当たりにした誰もが、ラドロイバーとの戦いに言い知れぬ恐
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