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フルメタル・アクションヒーローズ
第214話 真理と力と三つの影
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り出され、同郷同士で殺し合っていたかも知れません』
『……な、なにが言いたいの』
『そんな国を日本が助けられたのは、日本に力――すなわち知力と財力があったからです。それがなければ、日本は滅びて行く王国の姿をただ眺めるしかなかったはず』
『……』
『ですが。その逆は決してあり得ない。ダスカリアン王国が日本を助けることはない。強さを持たないダスカリアンに、そんな余力はないのですから。そしてそれをわかっていながら、なお日本が援助を続けられるのも、仇で返されても受け止められるほどの「武力」の賜物。あなたの語る理想は、あなたが良しとしない「力」によって守られてきたのです』
『……そ、んな』

 責めるような口調ではない。ラドロイバーはありのままの真実を、諭すように並べている。
 確かにラドロイバーの言うことにも一理はある。しかし、その武力が暴走すれば悪戯に被害を振りまいてしまうことだってあるはずだ。あの、瀧上凱樹のように。
 だからこそ、当たり前のように兵器として着鎧甲冑を扱う相手にこの力を渡すわけにはいかないんだ。
 ……しかし、救芽井は根っこの理想を大切に抱えて生きてきたためか――俺以上に重く、彼女の言葉を受け止めているようだ。物理的なダメージ以上の痛みが、指先の震えに現れている。

『母は強くなければ、我が子に無償の愛を捧げることすら叶わない。それと同じなのですよ』
『……』
『――尤も、あなたの思い描く未来も嫌いではありません。やり方さえ違わなければ、あなたとは上手く付き合えたことでしょう』

 そんな救芽井の衰弱した姿を、再び一瞥するラドロイバー。その瞳には、哀れみの色が滲んでいる。
 もう、救芽井に彼女を引き留める余力はない。彼女を止めるために一番必要だった「力」が、届かなかったことに心を折られてしまったのだろうか。

『では――さようなら。夢見る可愛い女の子』

 そして、改めて立ち去ろうとするラドロイバーが。

 皮肉るような捨て台詞を残す――

『確かに、貴様の言うことは正しい。どのような御託を並べようと、弱肉強食こそが真理。世を統べる資格は強者にのみ与えられる』

 ――瞬間。

『……だが、その真理に則り勝利するのは貴様ではない』

 金、銀、銅。三つの影が、青空から舞い降りる。

『我々だッ!』

 ――そう。
 第二ラウンドは、まだ終わってはいない。

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