第213話 灼熱の雨
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『放水準備、良しッ!』
『放水始めぇえッ!』
西条さんの叫びとジュリアさんの怒号。そして、両分隊のレスキューカッツェが駆け回る音が松霧高校に響き渡る。
一方、救芽井を追うカメラは、炎の壁に沿うように校舎の側を走っていた。
危険なはずだろうに……いち早く現場にたどり着くためとは言え、無茶だぜ瀬芭さん。
俺が早く現地入りして、お役御免にしないと……!
『ハァ、ハァッ……!』
そして、瀬芭さん自身の息が切れ始める頃。
『……』
『とうとう見つけたわ……! 装備を捨て、投降しなさい! エルナ・ラドロイバーッ!』
最後の角を曲がった先――敷地の裏手には、決戦の光景が広がっていた。
その身を包む漆黒のロングコート。風に靡く薄いブロンドの長髪。純白の肌。すらりと伸びた脚。整い尽くされた目鼻立ち。
そして――氷のように冷え切った、あの冷徹な碧眼。
見間違うはずがない。
エルナ・ラドロイバー。この戦いの、元凶となった女だ。
『あなたにどのような理念があったのかは知らない。だけど、父が平和を願って創り出した着鎧甲冑を兵器にする計画も――この街を焼き払おうとしたあなたの行いも、許すわけにはいかないわ!』
『……』
『――もう一度言います。装備を捨てて、投降しなさいッ!』
彼女と対峙している救芽井は、自分を冷ややかに見つめるだけで動きを見せないラドロイバーに対し、語気を強めている。
一見、威圧しているようにも見えるが……俺にはわかる。あれはむしろ、気圧されているのだ。
得体の知れない、殺気すら伺わせないラドロイバーの佇まい。その姿に、言い知れぬ不気味さを感じ、それ以上踏み込めずにいる。
だが他の連合機動隊は、その不気味さすら読み取れなかったのか。長身の美女を包囲しつつ、ジリジリと近寄り始めていた。
『……』
『……ッ!?』
ラドロイバーはそんな彼らに一瞥すらせず、救芽井の指示に従うように両手を上げる。
抵抗するわけでもなく、逃走するわけでもなく。能面のような無表情のまま、降伏する動きを見せるラドロイバーの様子に、救芽井は困惑を隠せずにいた。
彼女だけではない。
これまでゲリラ戦を繰り返してきた強敵が、捕捉された途端に降伏する。そんな拍子抜けしそうな光景に、連合機動隊も思わず歩みを止めてしまっていたのだ。
だが。
彼らは、立ち止まるべきではなかったのかも知れない。
『ッ!?』
『あれは!?』
ラドロイバーが降伏する動きを見せてから、僅か数秒の間を置いて。
両手を上げた彼女の袖の中から、「何か」が飛び出してきた。
『なっ、なんだ、あれ……!』
『お、おい……あの球、なんか穴がいっぱい空いてたぞ……』
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