第213話 灼熱の雨
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彼女の真上に打ち出されたその物体――幾つもの穴が空いた黒い楕円形の球体は、二十メートル程の高さまで飛び上がる。
連合機動隊の隊員達は、その物体を目の当たりにして、ようやく彼女の不気味さを察していた。
『ブラック・ビーハイブ』
それが、あの球体の名前だったのだろうか。
彼女がその名前を呼ぶ瞬間――
『ひっ――ァァアアアッギャアアアッ!』
『いぎゃあああ! 熱い! 熱いィィッ!』
『た、退避、退避ィィいッ!』
――瞬く間に。本当に、瞬く間に。
ラドロイバーの周囲は、火の海に包まれ……罪なき人さえ飲み込む地獄と化した。
『……ッ!? 夏、裏手から火が回ってる! 鎮火に向かえ!』
『わかりました!』
何が起きたかわからぬまま、着鎧甲冑の装甲すら貫通する灼熱を浴び、のたうちまわる連合機動隊。その絶叫とここに生まれた火の海を察知したのか、フラヴィさんは西条さんを派遣する。
『こ、これは……!? み、みなさんしっかりしてください!』
そして、この場に駆け付けた西条さんは案の定、眼前に広がっている惨劇に絶句していた。それでもすぐに気を取り直し、倒れている連合機動隊の保護を始めているところは、さすがプロって感じだ。
一方、ラドロイバーは西条さんの動きも気に留めず、火の海地獄をまぬがれた救芽井を冷たく見つめている。救芽井もそんな彼女に負けまいと、バイザー越しに怒りに満ちた視線をぶつけていた。
そしてラドロイバーの足元に、例の黒い物体が力無く落ちてきた瞬間――救芽井は、怒りに任せて叫び出す。
『打ち上げた弾頭から、周囲に拡散する焼夷弾だなんて……! なんて惨いッ!』
『……』
本能で危険を感じ、踏み込まずにいたことが功を奏したらしい。救芽井は、突如隊員達を襲ったこの炎の実態を、見破っていたのだ。
そう、この攻撃の正体は焼夷弾。手を上げると見せかけて上空に打ち出した黒い弾頭から、焼夷弾を拡散し……自身の周りを囲む外敵を根刮ぎ焼き尽くす。
しかも、着鎧甲冑ですら熱を防ぎ切れない程の火力。生身の人間に当たれば、どうなるか……想像もしたくない。
『ひ、ひりりん様! お逃げください! あなた様に万一のことがあったら……!』
『……』
『ひっ!』
西条さんもそのビジョンが見えてしまったのだろう。狼狽した様子で、救芽井に退却を呼びかけている。ラドロイバーにチラッと一瞥された途端、萎縮してしまっているが。
『――やめろぉぉおぉッ!』
それを見て、西条さんまでやられると危惧したのだろう。
今まで聞いたことのないような叫び声を上げ、救芽井は拳を振り上げ突進していく。
だが、ラドロイバーは余所見をしたまま空高く跳び上がり、彼女のパン
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