第212話 陽炎の向こうへ
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る可能性が高い。
『あ、ああ……!』
『狼狽えんじゃねぇお嬢様! それでも分隊長か!』
『で、でも!』
『泣き喚く前に悪足掻きを尽くせ! 旦那に自慢出来る活躍をして見せろッ!』
『りゅ、龍太……君……』
『ホラ、そこから敵は見えるか!? アタイらからじゃ死角なんだ、お嬢様が頼りなんだぜ!』
通信で救芽井を怒鳴るフラヴィさんの声も、切迫していた。彼女も、恐れを知らないわけではないのだ。
ただ、乗り越え方を知っているだけで。
『……』
『ぶ、分隊長……』
――フラヴィさんの言葉が、効いたのか。救芽井の指先から、震えが消えた。
そして。
『見えたッ! 二時の方向、体育館の裏手ですッ!』
『よしきたァァ!』
カメラが一瞬だけ捉えた、陽炎の先に映る影を指差し、救芽井が叫ぶ。それに応じるように、フラヴィさんも威勢に溢れた雄叫びを上げた。
『デュボワ分隊、敵襲に備えろ! ジュリア、てめぇはカッツェの連中数名引き抜いて消火だ!』
『けッ、あんたに言われるまでもねぇ。行くぜ夏、フンドシ締めてけよッ!』
『は、はぃぃい! ――って、私フンドシは締めてないですぅうぅ!』
救芽井分隊が繋いでいる通信の向こう側では、デュボワ分隊の奮闘が始まっていた。他の分隊も、立ち止まってはいられない。
『指揮官より各隊へ! 松霧高校周辺に、ラドロイバー出現! 包囲なさい!』
『久水分隊、了解。久水茂、いざ参る!』
『ジェリバン分隊、了解。現地に急行する』
『古我知分隊、了解した。すぐに行くよ!』
久水先輩の命令に応じ、方々に展開していた分隊が集結を始めているようだ。通信の向こう側から、現場に向かう隊員達の激しい足音が響き続けている。
そして、救芽井分隊では。
救芽井樋稟という一人のレスキューヒーローが、新たな一歩を踏み出していた。
『きゅ、救芽井分隊長……』
『……作戦を実行します。R型は松霧高校の鎮火に、G型は敵の警戒に当たってください。私はラドロイバーの追跡、及びデュボワ分隊の護衛に向かいます!』
『――ははっ!』
『了解しました!』
どうやらラドロイバーの意図を破り、気を持ち直したらしい。救芽井は声を張り上げ、ラドロイバーとの対決を宣言する。
その真摯な姿勢に、救芽井分隊も士気を取り戻しつつあった。
フラヴィさんの影響もあり、一際逞しくなったらしい。俺も、負けてられないな。
『各隊員、全力を尽くしてください! さもないと、き、きん……た、た、たまま……』
……でもね救芽井。そこは無理して真似しなくていいのよ。
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