第210話 重なる殻
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目だ見た目。
前よりはマシな気はする。が、それは前世紀の七十年代風デザインが九十年代風に変わった程度でしかない。どっちにしろ、今時のセンスじゃない。
アラサーの鮎美さんが作ったんだから、当たり前なのかも知れないけどさ。
『……それに、カッコいいし』
「……そっすか」
だが、いちいちそれを口に出すつもりはない。実年齢がアラサー手前の鮎子も、お気に召してるみたいだし。
――そうだ、要は勝てばいいんだよ勝てば。それに、この格好で負けたらさらに格好悪い。
「……よし。二段着鎧も完了したことだし、気合入れて行くぜ、鮎子」
『うん……!」
恐らく鮎子が想定していないであろう動機で気合いを入れる俺に、彼女は強く応えている。……ピュアだ。ホントにアラサー手前なんだろうか。
『――龍太君、聞こえる?』
「えっ……!?」
その時。突如、鮎子意外の声がディスプレイから飛び出してくる。次いで、その画面に件のアラサーが顔を出してきた。
――そうか。鮎美先生も、このバイクと交信出来るのか。
「無事に二段着鎧には成功したようね。どう? 悪くないでしょ」
「ああ、性能は申し分なさそうだ」
「当たり前じゃない。それとは別に褒めるところ、あるでしょ?」
「……いいセンスしてるよ。ところで、何かあったのか?」
二段着鎧の確認だけが用事とは思えない。そう問い詰める俺に対し、鮎美先生は真剣な面持ちで見つめている。……状況が、動いたのだろうか。
『……茂君達は現場に到着したらしいんだけど、状況は未だ好転していないわね。単体でも高い自衛能力がある剣一君や将軍を避けて、手薄な分隊をピンポイントで強襲しているようなの』
「向こうに配置がバレてるのか……!?」
『その線が濃厚ね。――現場の状況を瀬芭さんに持たせたカメラを通して、あなたに見えるように設定しておくわ。少しでも情報がないと、あなたが合流してもうまく立ち回れないでしょうし』
「……ああ、頼む」
向こうの状況。それは是非とも知りたかった情報だが、同時に知りたくない情報でもあった。
自分の町が、焼かれている光景など……見たくなくて当然だが。しかし、目を背けてはならない。
どのみち、この空の先で嫌でも目にしなくてはならないのだから。
「……!」
そして、鮎美先生の通信が途絶える瞬間。
松霧町を舞台に繰り広げられる攻防の様子が、俺の知るところとなる。
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