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フルメタル・アクションヒーローズ
第210話 重なる殻
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まるか! ……そんな気力だけが、俺の命を繋いでいるようだった。

「お、おっ……あああああッ!」
『先輩、今ッ!』
「――ッ! あ、ああ、行くぜッ!」

 そして、僅か数秒程度の死闘の果て。鮎子の叫びに応じ、俺はディスプレイの下部にあるスイッチに、拳を振り下ろす。
 この鎧に、殻を重ねるために。

「二段――ッ!」

 拳の鎚が、赤い円形に衝撃を叩き込み……ディスプレイに「FULL PLATE ARMOR」のイニシャルが現れる。
 同時に後方のタンデムシートが上に開かれ、そこから数多のプロテクターが打ち上げられて行く。まるで巡行ミサイルの群れだ。

 その防具の部品は、やがてこちら目掛けて急降下を開始する。流星の如き速さで、青と白のプロテクターが降り注いできた。

「――着鎧ッ!」

 そして鎧を纏うためにハンドルを手放し、力こぶを作るように腕を広げ――
 ――頭、肩、胴、腕、拳、腰、太腿、脛、足。身体中のありとあらゆる箇所に、蒼い鎧が張り付いて行く。
 「救済の重殻龍(ドラッヘンファイヤー・デュアル)」の、完成か。

 やがて、プロテクターの背後から小型ジェットが噴き出し――振り落とされかけた俺の背を押す。
 その推力に体勢を修正され、俺が再びハンドルを握り直す頃。上方に向かっていた車体の角度が徐々に緩まって行き……ついに、水平になる。

 久水家を飛び出してから、僅か数秒程度。たったそれだけの間に、数十年分の寿命を使ったかのような心境だった。
 ……鮎子の事情云々抜きにしたって、こんなの二度と乗りたくねぇよ。松霧町に着く前に星になるかと思ったわ!

『二段着鎧、完了。ぶっつけなのにバッチリだったね、先輩』
「お、おう。……これっきりにしたいもんだな、いやホントに」
『それは先輩次第。ボクとしては、この装甲を今後の主力にしてもいいくらいなんだけど』

 大事なアソコがヒュンヒュンしてる俺とは裏腹に、鮎子の声は涼しさを保っている。遠隔操作だから速さ実感がないのだろうか。……いや、実は済ました顔してスピード狂なのかも知れん。

 そんな俺の無意味な思案を他所に、彼女はディスプレイに二段着鎧後のビジュアルを表示させていた。これが今の俺の格好、ということか。
 本来のスーツの色である赤を基調にしつつ、白いパーツで縁取りされた蒼いプロテクターが全身の至るところに装着されている。
 肩の部分はやや横に向かって尖った形になっており、頭にはトサカのような兜が乗せられている。壁に叩きつけられた時、直接その部位に衝撃が加わらないようにするためだろうか。
 しかも、口元にはシールドも張られている。唇型の部分を覆い隠すかのように、その装甲は頑丈だ。

 ……確かに、実用性は申し分ない。だが、問題は見た
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