第208話 最初で最後の決戦日和
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ば、次はないと思った方がいい」
……瀧上凱樹を切り捨て、四郷姉妹を見殺しにしようとした日本政府――か。確かに、その線もあるかもな。
敵はラドロイバーと――時間。全てを解決するチャンスは茂さんが言う通り、今日しかないのだろう。
「――そうだな。明日はない。今日を、決戦にしよう」
「うむ。貴様も、その意気でワガハイに続くがいい。……瀬芭、出陣だ!」
「ははっ!」
そして、茂さんの命令に応じる瀬芭さんの声に応じて、ヘリは勢いよく上空へ舞い上がる。これから赴く、戦地を目指して。
俺はしばらく、微動だにせずにその出発を見送っていたが――
「……!」
――ふとした瞬間、久水先輩の姿が目に入り。思わず、目を見張る。
彼女は、地上の俺に向けてあるサインを送っていたのだ。
中指、人差し指、親指の三本を立て、手の甲を相手に見せるようにして額に翳す。
――俺が所属していた、レスキューカッツェ特有の敬礼だった。
「……」
レスキューカッツェは追っかけ対策として、隊員個人の情報から訓練内容に至るまで、救芽井エレクトロニクスによってあらゆる情報が秘匿されている。
にもかかわらず、あのローカルルールをどこで知ったのか。どうやって知ったのか。
皆目見当つかないが――ただひとつ、はっきりしていることはある。
そんな細かいところまで知ろうとするほどに、彼女は俺を愛してくれていた。それだけは、たぶん確かだ。
「……ありがとな、こずちゃん」
その気持ちには応えられなかったが――せめて、敬意として応じよう。きっとそれが、今の俺の精一杯だから。
レスキューカッツェ式敬礼で送り出す俺を背に、ヘリはさらに高く舞い、遠くへ飛び去って行く。
見えなくなるまでに、そう時間はかからなかった。
――そして。
「……参ったな。震え、止まらねぇ」
すぐにでも追いたい、力になりたい。そんな俺の思いが、この拳を震わせていた。
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