第208話 最初で最後の決戦日和
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火災で町を焼かれんためのレスキューカッツェか……。もしくは戦闘が長期化した場合のバッテリー補給要員でもあるのだろうが、戦闘能力を持たない彼女達は状況次第では獲物にしかならん。それまでに我らの親衛G型部隊を機動連隊と合流させておけ。か弱いレディには指一本触れさせぬよう伝えろ」
「かしこまりました」
早歩きで廊下を歩く茂さんの背後につき、セバスチャン――じゃなくて瀬芭さんが状況を伝える。レスキューカッツェ……フラヴィさん達も来てるのか……。
茂さんは瀬芭さんの語る現状に対し、しばらくは背を向けたまま対応していたが――
「それともう一つ。誰一人として、犠牲になることは許さん。全隊員に生還を厳命せよ」
「……仰せのままに」
――振り返り、その一言を言い放つ様は、随分と堂に入っている。こういう当主らしいところをいつも見せてくれりゃあ、素直に先輩ヒーローとして立てようって気にもなるんだがなぁ。
とにかく、俺達もこうしちゃいられない。
俺と鮎子は互いに目を合わせて頷き合うと、互いの部屋へ駆け出して行く。今すぐとは行かないが、俺達も戦闘準備だ。
燃え滾るような色遣いのユニフォームに袖を通し、暑苦しい鉢巻をきつく締める。
不思議と今日は、服を着る動作一つにも力が入ってしまう。それに、よく見ると指先の先端だけが僅かに震えているようだった。
――武者震いか。恐れか。答えなら、すぐに出るさ。
せめて、先輩の出陣くらいは見送ってやろう。その一心で門前に駆けつけた頃には、既に久水家のヘリが旋風を起こしていた。
見送りは――いない。ヘリの中から威風堂々と身を乗り出している茂さんの両脇は、瀬芭さんと久水先輩に固められていた。
「……なんだよ、見送りは俺だけか」
「必要なかろう。ワガハイが命じた以上、全員の生還は確定された。見送りというものは、その者の未来を案じるがゆえに行うもの。ワガハイには不要である」
「随分な自信じゃねーか。それでコテンパンにされたら格好つかないぞ」
「格好ならつくさ。むしろ、我々だけで決着がついた時に肩透かしを食らうのは誰かな」
「……その方が、俺も鮎子も楽でいいんだがな」
この土壇場でも、茂さんの姿勢には一片の揺らぎもない。俺の心配が馬鹿らしくなるほどに、恐れや焦りというような負の感情からは遠いところに立ち続けている。
「確かに、な。我々の敵はラドロイバーだけではないのだからな」
「なに?」
「――日本政府の連中が、この件がここまで拡大していることに感づくのも時間の問題だ。そうなれば、我々に手を引くよう厳命し――国家権力を利用して脅しに来ることも考えられる」
「……!」
「そうなる前に手を打たねば、どの道ダスカリアンにもあの王女にも未来はなくなる。今日を逃せ
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