暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第4章 夢の中の天使
第207話 運命の狼煙
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スしなくていいよ……」

 「超機龍の鉄馬」に夢を見させない鮎子のシビアな言葉に辟易しつつ、俺は彼女から短冊を受け取る。既に池の奥にある笹には、数枚の短冊が掛けられていた。
 どうやら、藁にもすがる思いなのは俺達だけではないらしい。日本の風習を重んじてるだけかも知れんが。……ここ、京都だしなぁ。

「……そういや、鮎子はどんなこと頼んだんだ?」
「もちろん、ラドロイバーの打倒だよ。茂さんと梢も、同じようなこと書いてる」
「ふーん、なるほどね……」
「先輩もそうでしょ?」

 俺の顔を確認するように覗き込みながら、鮎子はそう訪ねてくる。

「いや、ちょっとだけ違うことを書くよ」
「違うこと?」
「みんなして同じことばかり組織票みたいに書いてたら、織姫も彦星もウザがるだろ。俺はもうちょっと、その先のことを願うことにするよ」

 拝借した筆ペンを滑らせ、神様への訴状を書き上げる。その旨は「遠い砂漠の人々に、平和な未来が訪れる日を願う」、というものだった。

「……そっか。先輩、らしいね」
「もっとも、本音を言っちまえば矢村やダウゥ姫のためみたいなもんだが……せっかく神様に勇気を貰うんだ、綺麗な建前でゴマするくらいはしとかなきゃな」
「……そんなセコい人に神様が協力してくれるのかな」
「ひっでぇ! 願掛けしろっつったのは鮎子なのに!」
「……ん、そうだったかな?」

 相変わらずな毒舌にひとしきり突っ込んだあと、俺は短冊を手に腰を上げる。

 この戦いが終わった先に、何が待ち受けているのか。それは、その時になってみなけりゃわからない。
 その結末を少しでも良いものに近づけられるなら、願掛けでも何でもやるさ。その思いがあるから、二段着鎧の実現にここまで来れたんだし。

 ――あとは、向こうの力がこっちの想定を上回っていないことを祈るぐらいか。

「……そう、そう。……わかったわ、すぐに準備させる。そちらも気をつけて」

 気休め程度の願掛けでも、それでモチベーションが上がるなら。その思いに引かれ、笹に向かおうとした俺を、鮎美先生の逼迫した声が引き止める。
 誰かと電話で話しているらしい。ついさっきまで騒がしくしていた久水家の面々も、この時ばかりは借りてきた猫より大人しくなっていた。

 ……あの様子。まさか。

「――龍太君」
「……ああ」

 そう直感で感じ取った、俺の勘は。

「状況が変わったわ。松霧町で、ラドロイバーが発見されたようよ」

 鬱陶しいほどに、的中していた。

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