第205話 久水家の宴
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たように思う。真に強い者だけが正義を通せる、という話なら、否定されたのは俺の方じゃないだろうか。
「だが、これで終わりではないぞ。いや、始まりですらない。貴様はワガハイに勝った以上、是が非でも勝者としての義務を果たさねばならん。必ずラドロイバーを倒し、皆を守り抜くという責任がな」
「……わかってるさ。鮎子のことも、俺が守ってやる」
「……やはり貴様はわかっていない。彼女は貴様に命を――全てを託した。貴様のために『新人類の身体』への恐れを乗り越え、共に戦うために」
「……共に……」
「貴様が眠っている間に……彼女達姉妹の覚悟のほどは見せてもらった。鮎子君と貴様は、もはや一心同体。貴様は彼女を守るのではない。彼女と共に、人々を守り抜くのだ。肩を並べて、互いの命を懸ける――そのリスクと引き換えに得る力が、『二段着鎧』なのだぞ」
「……二段着鎧、か」
「そうだ。一人で戦い、一人で終わらせる『怪物』ではなく――仲間と共にリスクを背負って立ち上がる『人間』として、貴様は貴様の守りたい者を守れ。それが、貴様が望まれる強さだ」
――二段着鎧。そうだ。そいつを使いこなすために、鮎子は今までずっと……。
「そのリスクなくして、ダスカリアンを救うことは出来ん。彼女だけを修羅にはさせるな。修羅の道には、貴様も付き合え。それが、今の貴様が為すべき義務だ」
「……ああ。やって見せるさ」
「それに、ちょうど明日は七夕だ。今のうちに、貴様が果たしたい正義でも書き留めておくのだな」
「……は?」
今、なんつった。七夕?
「ん? ああ、言っていなかったか。貴様は三週間以上昏睡状態だったからな。鮎美さんがいなければ、今頃は病院に強制送還になっていたところだ。感謝することだな」
「そんなに寝てたのか俺!? ――ってあれ? そういえば女性陣はどうしたんだ」
「彼女達なら夕食を取って先に就寝したはずだ。といっても、全員貴様のことが気掛かりで眠れない日々が続いていたからな。まだ起きている者もいるかも知れん」
……そっか。みんな、俺のこと……。三週間も眠りっぱなしじゃ、結構長いこと心配かけただろうしなぁ。
せめてこれからは、いらん迷惑はかけねぇようにしなきゃな。
「……じゃあ俺、ちょっと部屋に戻るわ。もしかしたら入れ違いになってるかもだし」
「ああ。――それと、梢にも断りは入れておけ。ああ見えて、未練がましいところもある」
「……わかった」
――そうだな。ケジメは、ちゃんと付けとかないと。
そのやり取りを最後に、俺は踵を返して自分が眠っていた部屋へ向かう。
そこは――茂さんの見立て通り、襖の奥で人影が蠢いていた。あのボンキュッボンなシルエット、俺が知る中では一人しかいない。
やがてその人影の主は、
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