第204話 茶番劇の終幕
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はまだ、守らなくちゃならない人がいる! まだあんたに、この命はくれてやらんッ!」
振り下ろされた電磁警棒を、左手で掴み取る。刹那、電流が全身に迸り――耐え難い激痛が俺の意識を奪って行く。
「オオ、オ、オオォオォォオオオッ!」
だが――俺はまだ、止まらない。
掴んだ勢いのまま、痛みを真正面から受け止めたまま。左手の握力のみで、電磁警棒を破壊する。
けたたましい破裂音と共に、電磁警棒はバラバラとなり――破片を撒き散らして四散した。
「ぬおっ……!?」
「グアア、ア、ァァァアアアアッ!」
その反動で仰け反り、茂さんは数歩後ろへ後退する。無論、その隙を逃す手はない。
全身の体重を預けるように、俺の最後の左拳が、仇敵の三日月へと向かっていく。
これで、今度こそ――終わりだ。
「ごわアァッ!」
「うぐッ……!?」
そして、勝敗を決する一撃が決まる瞬間。
俺の身体に、さらなる痛みが襲い来る。
こちらの拳が決まる直前、茂さんが最後の力を振り絞って引いた引き金により……テイザーライフルの麻酔針が放たれ、俺の左足を撃ち抜いていたのだ。
全身の筋肉を痙攣させ、自由を奪う麻酔針。これを受けてしまえば、もはや指一本動かせず完全に打つ手を失う。もう、尽くせる力はここまでだ。
「ぐ、う……!」
「む、おっ……!」
そして、互いに決定打をぶつけ合った俺達は、その勢いのまま重なるように倒れ込む。
もうお互い、微動だに出来ないようだ。
(……そうだ。それでいい。己の命を犠牲にして勝利を掴み取ったところで、ダスカリアンの未来が明るくなることはない。この先、あの国には貴様の力が絶対に必要となるのだ……)
だが、麻酔針を受けて全く動けない俺に対し、茂さんは僅かに意識を保っているようだった。
(……必ず生き延びろ、一煉寺龍太。自分自身も鮎子君も、ダウゥ姫も矢村賀織も、ダスカリアン王国も。纏めて救って見せるのだ。力を証明し、このオレに勝ってしまった貴様には……その、義務、が……)
そして、久水先輩の方に首を向け――何かを訴えるように見つめた後。その首は、力無く地面に落ちてしまった。
どうやら、気絶したらしい。普通なら最初の一撃でダウンを奪えるくらいの攻撃だったはずなんだけどな……全く、甲侍郎さんも厄介な兜を作りやがる。
おかげで、どっちも満身創痍だっての。
「……」
そんな俺達を静かに見つめながら、久水先輩はゆっくりと歩み寄ってくる。決闘の終焉を、感じ取ったからだろう。
俺と茂さんを交互に見遣り、先輩は沈黙した。判定が気になるところだが……どうやら、俺も意識が限界らしい。
やっぱ……手で電磁警棒を掴むなんて無茶、するもんじゃないや……
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