第203話 雄の性
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狙いを定めていた。
そして――俺が腰を捻り、右の拳を突き出した瞬間。トリガーに、指が触れる。
「終わりだッ!」
絶対に外さぬよう、ギリギリまで引きつけて。テイザーライフルの麻酔針が、俺の眉間へ撃ち放たれた。
突き出された拳とすれ違い、俺の頭に向かって鋭利な弾丸が伸びていく。刹那の世界で、今まさに勝負が決しようとしていた。
――だが、こんな針一本でこの戦いを終わらせるつもりはない。まだ、俺は何もしちゃいないんだから!
「……トワチャアッ!」
「――なっ、に!?」
そう。この瞬間、彼の意表を突くために、俺はわざわざ先に右拳を突き出していたのだから。
テイザーライフルの麻酔針は俺の額に突き刺さるよりも早く、俺の左手で弾かれていたのだ。正しくは、俺の左手に握られていた――電磁警棒で。
今まで自分の電磁警棒を戦いで使ったことがなかった俺にとっては、ほとんど賭けに近い戦法。
だが、あの電磁銃剣に立ち向かうには電撃を凌げる同質の「防具」が必要なのだ。不意を突くために、わざわざフェイント用の右拳を突き出した甲斐はあったらしい。
とにかく、テイザーライフルの麻酔針はかわせた。あとはライフルに取り付けられた電撃警棒さえ防げば、拳で叩きのめすのみ。電磁警棒の扱いで劣る俺がこの勝負を制するには、その分野での技能差が露呈する前に決着を付けるしかない!
「貴様がッ、電磁警棒とはッ……!」
――読み通り。茂さんは今まで一度も電磁警棒を使ってこなかった俺の不意打ちに動揺している。あとはこの隙と落下の勢いを利用して、一気に畳み掛けるのみ。
「あんたの迎撃を受けるくらいなら――ポリシーなんざ捨ててやる」
左から右へなぎ払い、麻酔針を弾いた姿勢から、さらに反対方向へ電磁警棒を振り抜く。その一閃を受け、迎撃のために突き出された茂さんの銃剣は、左方向へ弾かれてしまった。
ここまで来れば、もうこの禿げた石頭を守る得物は何も無い。墜落の勢いに身を委ね、赤い鉄槌を下す。
「終わりだ――トワァァアアッ!」
「ぬぅ、ん……アァアァアアッ!」
そして。為す術もない茂さんの眉間に、俺の拳が激突し――全てが終わる。
終わる。
はずだった。
最後の力を振り絞って、茂さんが第三の迎撃を仕掛けて来ることさえなければ。
「ごはァッ!」
「う……が、ああッ!」
互いにのたうちまわり、地に伏せる。狙い通りに拳は入ったが、想定以上の反撃を受けてしまった。刺し違えられたのは、こちらの方らしい。
……頭に、電磁警棒を受けたようだ。視界が、歪んでいる。目眩が、止まらない。
だが……はっきりと、覚えている。
あれは――久水流銃剣術、蛇流撃。
俺が拳を茂さんの
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