第201話 久水流の爪と牙
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――随分と手強くなったもんだ。「龍を統べる者」の性能にサムライダイトという新装備、そして久水流銃剣術……。
久水先輩が楽には勝てんと太鼓判を押したのも納得の強さだ。なるほど、確かにこれは楽勝とは行かない。
だが、付け入る隙はあるはずだ。
銃剣は接近戦において、槍に近しい性能を持ってはいるものの……長槍ほどのリーチがあるわけではなく、得物としての高い効果を発揮する部分は剣の辺りに限られている。
あのテイザーライフルの懐に踏み込み、取り付けられた電磁警棒さえ躱せれば……!
「――電磁警棒もテイザーガンも知っていながら、丸腰で相対することに全く抵抗がなく、怖気付く気配もない、か。オレの見立て通り、相も変わらず痛みを恐れぬ男だ」
「痛みは怖いさ。怖いなら、当たらなけりゃいい」
「オレの攻撃全てを躱し、その拳で打ち抜く算段があるということか。いいだろう、見せてもらうぞ」
油断も慢心もなく。茂さんはただ悠然とサムライダイトを構え、俺の出方にいつでも対応できるような臨戦態勢を整えていた。
――寸分の隙も見逃さないし見せない。って言いたげな構えだな。澄んだ水みたいな眼、してやがる。
だが、俺にも負けられない理由はある。ここであんたを抜かなきゃ、ダスカリアンは救われない。ダウゥ姫も、見殺しにしちまうんだ。
そんな未来を呼ばないためにも――あんたを、討つ。
軸足となる足を前方に構え、そこに全体重を掛ける。一瞬で相手に接近する、必殺の体勢。
それを前にしてなお、茂さんは姿勢を崩すことなく――穏やかささえ感じさせる佇まいで、勝負の瞬間を待っている。
言葉が途切れ、互いの動作が完全に静止し、風の音ばかりが響く頃。
誰もが息を殺し、静寂がこの世界を包む頃。
一枚の深緑の葉が、林から吹き抜けるそよ風に運ばれ、俺達の間へ流れ出る。
ひらひらと左右に揺れ、石畳に吸い寄せられるかのように、地に落ちて行く。
――この葉が地面に届けば、揺れることもなくなる。命を失った人間が、動かなくなるように。
一年前のあの日。鮎美先生に見せられたダスカリアンの惨事が蘇る。
あの悪夢が……ああなってはならないという焦りが、俺をここへ誘った。
だから、俺は――
「……ァァァアアアチャアアァアァッ!」
――葉が大地に伏せる時、地を蹴るのだ。眼前に立ちはだかる障壁を、打ち破るために。
「この愚か者がァァァッ!」
茂さんの怒号と共に、テイザーライフルの針がこめかみを掠め、左の角を貫いて行く。酸素タンクが破かれ、空気が猛烈に吹き出し――その勢いに流されるように、俺の進路は軌道を変えた。
――こんな動き、あんたは見たことないだろう。狂った予測に思考が追い付く前に、
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