第196話 落涙と決意
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ないって感じだったし」
呆れるようにため息をつき、腕を組んでたわわな胸を寄せ上げる。もし歳の近い姉がいたら、こんな具合だったのだろうか……。
「それがあなたなりのケジメなのかも知れないけど、私に言わせればそれは間違いよ、龍太君」
「な、なに?」
その時、救芽井の瞳に――今まで見たことのないような、強い炎が宿る。
仇敵を刺し貫く、大槍のように。どこまでも真っ直ぐな眼光が、俺の視界に突き刺さる。
「勘違いしないで。私は、龍太君に振り向いて欲しくて、これを渡しているわけじゃないのよ。何があっても、私達が臨んだ正義を貫いて欲しいから――これを託すの。あなたが誰を選んだとしても、支え続けるって……私は、ずっと決めてたんだから」
「救芽井……」
「鮎子だって、そうよ。あなたが選んだ結果を叶えたいから、戦うことを望んだの」
さらに彼女は、手にした新ユニフォームを俺の胸に押し付けながら……畳み掛けるように声を張り上げる。
「……あなたが命より大切にしている矜恃を捨てさせてでも生きていて欲しいのなら、私達だって向こう側に居たわ! 私達は、どんな未来が待っていたとしても、あなたがあなたらしく生きることを望んでる! だからあなたに付いた! 二段着鎧に手を染めることも、賀織を選んだことも、そのあなたが決めたことなら、私達が止める理由はないのよ!」
「……」
「バカの癖に! 筆記ギリギリのおバカの癖に! それらしい言葉で取り繕うのはやめて! 本当にケジメを付けたいのなら、あなたらしく行動で示してよ! 好きな娘も、助けたい人も、皆救って見せてよ! そのために尽くせることを、尽くしてよ! 使えるものはとことん使って、ボロボロになるまで使い潰しなさいよ! でなきゃ、あなたを信じてる人も……私達も……みんなみんな、惨めじゃない……ッ! 悲しい、だけじゃない……」
だが荒れ狂う嵐が、やがて過ぎ去り静けさが戻るように。彼女の叫びも、徐々にその勢いを失いつつあった。
声にならない悲鳴と涙を、押し殺して。新ユニフォームごと、自分の顔を俺の胸元に擦り付けて。
――ここに来て、ようやく気づかされた……ような気がする。自分が、どれ程の罪を背負っているのか。どれ程、彼女を傷つけていたのか。
正直、償えばどうにかなる次元の過ちではない。彼女の言う通り、どう言葉で取り繕っても意味はないのだろう。
彼女の涙は、もう――零れてしまったのだから。
「――わかった。ありがとう、救芽井」
「……」
「これ以上グチグチ御託を並べるのは、やめだ。遅過ぎたかも知れない答えだけど、お前が見せた言葉も涙も、無駄遣いにはしない。絶対に勝って、ダウゥ姫を救う。助けたい人を助ける。俺にできるケジメの付け方は、土下座以外にはそれだけだ」
「……
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