暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第195話 褐色の少女と戦える理由
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 矢村はさらに上ずった声でひっくり返ったような音を立てるが、電話の向こうからは嬉しそうな声が立て続けに漏れ出していた。
 ここまで来ておいて、やっぱ負けました。なんてことになった日にゃ、身体が完全になってラドロイバーが無事に捕まっても、一生着鎧甲冑には触れられなくなっちまうな。

 ま、勝てばいい話だ。

 ……って、我ながら現金なもんだよな。さっきはあれだけ決闘を怖がってたってのに。
 今は勝てる気しか、しないなんてよ。

「じゃ、お前の言うとおり明日は早いんだし。もう寝るわ」
『えぇえっ!? ちょ、ちょっと待っ――!』
「お休み。俺がぞっこんな、矢村賀織」

 明日どんな顔で会えばいいのか。そんなことはまるで考えていない、どストレートな告白の嵐。
 面と向かっているわけでもなく、つかは殺されるかも知れない今でしか、到底言えない台詞だっただろう。

 だが、これでいい。
 これくらい無茶苦茶に負けられない理由を作っとかなきゃ、現実の状況に呑まれ、戦う前から勝敗が決まっていた。

 瞼を閉じると――照れた褐色少女の愛らしい笑顔がふわりと浮かび、消えてゆく。

「……いい夢、見れっかな」

 決闘前夜の空を見上げて、俺は窓の淵を静かに撫でる。淵に触れる手に、震えはない。
 そして、まどろみに意識を任せる中で――俺はようやく。笑うことができた。

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