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フルメタル・アクションヒーローズ
第195話 褐色の少女と戦える理由
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「矢村ぁ? おーい、大丈夫かよ」
『んにゅっ! だっ、だだ、大丈夫やで! どどど、どしたんや?』
「いや……なんだろうな。ただ声が聞きたかっただけなのに。今は、お礼が言いたい」
『おっ、お礼?』
「うん。お礼だ」

 この夜の闇の中で、不安に押し潰されそうになって。そうはなるまい、と半ば強引に意気込んで。
 それでも、恐れから逃げられなくなりそうだった時。気がつけば、俺は彼女の名を呼んでいた。

 そして、いざ声を聞いてみれば。
 耳をつんざくような騒がしい彼女が、いつもと変わらない雰囲気を纏って、いつものようにハレンチなことを口走っていた。
 今は、それすらも愛おしい。

 変わらないでいてくれる彼女と、その在り方が。それを大切にしたいと、俺を願わせるのだ。

『ア……アタシは別に、何もお礼なんて言われるようなことはしとらんよ。樋稟も鮎子もすごいことやってきとるし、梢先輩やってホンマはあんたが心配やからこんなことしとるんやろうし……。アタシは今も昔も変わらんまんまで、何の役にも――』
「変わらないで居てくれることに、だよ」
『――えっ? か、変わらん、こと?』
「そ。俺がどうなっても、周りがどんなに変わっても。お前はずっと、昔のままだ。昔みたいに口うるさくて騒がしくて、ちんちくりんで。……こんな時でも、電話に出てくれるくらい優しくてさ」

 不安な気持ちを、彼女の普段通りの姿にほぐされたからか。いつも
なら最後の砦となるはずの心のブレーキが、まるで仕事をしてくれない。

「もうっ! ちんちくりんは余計――」

『そんなお前がずっと好きだったから。お前の前でカッコつけたかったから、俺は今まで戦い抜いてこれたんだと思うんだ』

 そしていつからか。俺は、ブレーキを踏もうとする気持ちさえ、彼女に溶かされていたようだった。

『えっ……』
「だから、これからもきっと大丈夫。お前なら、そう思わせてくれるから。この先も、そうありたいんだよ、俺は」
『あ、や、う、うそ、アタシ、アタシは……!』

 ――それ見たことか。ブレーキを踏まなかったばかりに、慌てさせちまってよ。いちいち人を困らせることに余念がない男だな、俺は。

 まぁ、いい。言うだけ言ってスッキリした方が、明日の決闘のモチベーションになるってものだ。
 夜の闇に、自業自得で赤くなった顔が隠れているうちに――言いたい放題、言わせてもらうとしよう。

「矢村。お前は、俺のやることには反対か?」
『ん、んなわけないやんっ! アタシは、あんたがしたいことの邪魔なんて出来ん! アタシには、あんたをちょっとでも励ますことしか……やれそうなことも、ないんやから』
「だったら。俺は、お前のためにも勝つよ。おかげで、決心もついた」
『ひぅ……!
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