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フルメタル・アクションヒーローズ
第192話 嫁姑戦争(物理)
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ばかりではない、拳法ばかりに頼らない――そんな、名前の通りの素晴らしい『ヒーロー』に育てて見せる、と」
「……」
「あなたの思うその『素晴らしいヒーロー』とは、今のあの子のように、一国の存亡を賭けた決闘に駆り出された挙句、元軍人の陰謀に巻き込まれるような人を云うのかしら。かけがえのない兄弟を失いかけるところまで行かないと、辿り着けない場所なのかしら」

 救芽井を追及する母さんの眼差しは、洗練された刀剣のように、鋭く――冷たく、そして容赦がない。今にも、救芽井の肉を切り裂かんと狙っているようにも見えてしまう。
 そのただならぬ雰囲気を肌で感じ取っていた俺は、反射的に母さんを止めようと動き出す――が、親父に肩を掴まれ、あっけなく止められてしまった。
 その手に込められた力は尋常ではなく、肩を掴まれているだけなのに、俺の体は金縛りに遭ったかのように動かない。

 俺は咄嗟に上を見上げて親父に抗議の視線を送るが、親父は無言のまま首を横に振るばかり。
 あくまで、母さんに任せておくつもりなのか。少なくとも、親父は母さんを信頼しているみたいだが……不安だ。

 ――それにしても、母さんは一体、どういう人だったのだろうか。十八歳を迎えた今になって、俺は不思議に思っていた。

 俺が知っている母さんは、何があっても柔らかく笑うばかりの人で、怒った顔なんて一度も見たことがない。怒ることがないわけではないのだが、そういう時はにこやかに笑いながら妖しいオーラを噴き出して、俺達を屈服させていた。
 ……そう。俺がクラスの女子と喋ったというだけでそわそわしたり、一緒に暮らしていた頃は、毎日弁当を作ってくれたり。少々思い込みが激しい点を除けば、基本的にはどこにでもいる普通の主婦だったはず。あんな顔をする人では、なかった。

 だが思い返してみると、普通と言うには違和感が残る部分もあった。

 実は母方の実家、というものを、俺は知らないのだ。親父と結婚するまで、母さんは孤児だったと聞かされていたからだ。亡くなった両親のことを思い起こさせるのは可哀想だから詮索するものじゃない、と親父に言い聞かされていたこともある。
 俺としても、無為に母さんを傷つけるような真似は望まないし、知らなきゃいけない理由もなかったから、特に母さんの過去を気にすることはなかった。きっと、兄貴もそうだったのだろう。

 それに、親父が以前話していた「母さんと結婚するために一煉寺を出奔した」という話もよく考えたらちょっと変だ。
 確かに身元不明の孤児との結婚ってのは、時代が時代なら嫌がられてもしょうがないのかも知れないが……親父の世代でそんな風習が残っていたとは考えにくい。爺ちゃんがよほど古風な価値観を持っていたから、とか?
 でも、爺ちゃんは親父に一煉寺を継ぐかどうかは
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