第191話 二人の改造人間
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その時が今なのか、そうじゃないのか。その結論は、明日の決闘がきっと教えてくれる。
「樋稟ちゃんは鮎子君のケアに大わらわだし、賀織ちゃんは君の世話に必死だし。伊葉さんは甲侍郎さんの支援を求めて東京に行ってるし。将軍は『我々は我々でラドロイバーを探ろう』なんて言って、姫様と一緒に行方をくらますし……なんだろうね、僕ばかり役立たずって気がするよ」
「んなこたぁない。あんたがいなきゃ、俺はこうしてお天道様の恵みを浴びることすら出来なかったんだ。感謝してんだぜ、これでも」
「……僕に、もっと人間兵器としての力があれば。君が、それを有り難がることもなかったのかもね」
「よせよ、辛気臭い。どんなに悔いたって、それで兄貴の怪我が治るわけじゃないし、ラドロイバーに勝てるわけでもない。だったら、今の俺達に残された手段で、この厄介な事件を乗り切るしかないだろ。違うか?」
「……そう、だね。あはは、まさか君に元気付けて貰う日が来るとは思わなかったよ。――大人に、なったね」
そう呟き、微笑みかける古我知さんの面持ちは――少しだけ、安らいでいるようにも見えた。
かなり、気に病んでいたのだろう。
「ま、兄貴の身分証に頼らずともエロゲーを買える歳にはなったからな」
「はは……それが言えちゃうくらい立ち直れてるなら、精神面の心配はなさそうだね。……でも」
そこで一度言葉を切り、古我知さんはこちらへ刺し貫くような視線をぶつける。さっきまでとは――違う空気だ。
「……僕の本音を言わせて貰うなら……君にはこれを契機に、『普通の人間』に立ち戻って貰いたかったよ。わがままな話だけど、それだけが心残りだった」
「――あいにく、だったな。俺は、まだ怪物を辞める気はない」
「そうか、残念だ」
短い問答を経て、俺達の間に妙な静寂が訪れる。理解出来ないわけではないけれど、どこか相容れない。そんな、距離だ。
「……あまり長い時間、外にいたら危険かも知れない。そろそろ、病室に戻ろうか」
「……そう、だな。ジッとするのは好きじゃないんだが、仕方ない――ん?」
どちらが先に耐え兼ねたのか。俺達は同時に立ち上がると、病棟に向けて踵を返した――のだが。
遥か先から土埃を上げて急接近してくる人影に、思わず眉を潜めてしまう。それが矢村だと俺達が気づく頃には、既に目と鼻の先まで間合いを詰められていた。
「龍太ぁぁっ! 大変やぁぁっ!」
「ど、どうしたんだよいきなり。俺が言うのも変だけど、ラドロイバーが襲ってくるかも知れないってのに、勝手に外に出ちゃダメだろ」
「賀織ちゃん、一体何があったんだ?」
突然、切羽詰まった様子で駆け込んできた矢村にたじろぐ俺に対し、古我知さんは息を切らしている矢村を冷静に宥めながら、事態の把握を急い
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