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フルメタル・アクションヒーローズ
第191話 二人の改造人間
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た次の日に、足早に松霧町を去ってしまっている。今は京都で、「決闘に勝った後の段取り」を進めているらしい。……舐められたもんだ。

 ――まぁ、勝つ前提の準備のしてるのは向こうだけじゃないんだがな。

「で、四郷の方はどうなんだ? 例の訓練」
「まだまだ難航してるみたいだね……。君のデータを把握しきって動くには、かなりの技量が要求されるみたいだよ。僕らの常識がまるで通じない君を知り尽くさなきゃならないんだから、当然なのかもしれないけどね」
「悪かったな、非常識で」
「僕にぼやいたってしょうがないだろ。――そんな君だからこそ、彼女は生きて、こうして君に尽くしてるんだろうけどね」

 この一週間、血反吐を吐く思いで特訓に臨んでいるのは、何も俺一人だけではない。

 俺の行動を的確にサポートし、二段着鎧のメリットを活かすための訓練を始めた四郷もまた、地獄の苦しみを味わっているのだ。

 引き際をわきまえた他の資格者達とは違い、レッドゾーンの遥か先にまで土足で踏み込んで行く俺の動きに合わせながら、増加装甲に装備されたスラスターを、正確なタイミングで起動させる。本来ならば、俺の筋肉の動きを感知して自動で行うコンピュータの仕事であるそれを、彼女は人力で制御しなくてはならないのだ。
 つまり、ただでさえ非常識な奴の一挙一動を、全て把握して手動でサポートしなくてはならない――ということになる。

 「新人類の身体」の機構に疎い俺にだってわかる。これは、無茶振り以外の何物でもない。
 あの豪華客船の一件も含めた俺の全ての出動データがあるとはいえ、それだけの情報で俺に合わせた動きを得ようだなんて、無茶苦茶にも程がある。

 それに彼女にとっては、機械仕掛けの身体に戻ることはおろか、その名を聞くことさえ身を裂かれるような苦痛だったはず。なのに彼女は今も俺の勝利を信じながら、その理不尽な訓練をめげることなく続けているのだ。

 ……俺は、間違っているのだろうか。

 仲が良かったはずの姉に散々怒鳴り散らされながら、コンピュータに向かってひたすらシミュレーションを繰り返す。そんな小さな背中を病院の中で見かける度に、そんな言葉が脳裏を過る。
 そしてその都度、俺は頭を振り、自身のリハビリに臨む日々を過ごしていた。

 ――ここで引き返すことは、ダウゥ姫を見捨てることを意味する。それは彼女を救おうとした、俺自身のやり方を……四郷達を助けてきた、一煉寺龍太という在り方を、辞めてしまうことを指す。
 そのやり方が間違いだというなら、いつか必ず、そいつを力でねじ伏せられる日が来るだろう。あれほど強かった瀧上凱樹が、結局は……ああなったように。
 だから俺も――抗いようがない力に潰されるまでは、間違いだとしても……走り続けるしかないんだよ。

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