暁 〜小説投稿サイト〜
フルメタル・アクションヒーローズ
第188話 義憤の行方
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の目の前へ、静かに歩み寄る。
 その迸る激情を顕すように、黒一色のチャイナドレスに覆われた巨大な双丘が、波のように大きく脈打ち、上下に揺れていた……が、そこに気を取られていられないほどに、彼女は強烈な殺気をその豊満な肢体に滾らせていた。
 スリットから覗く、流麗な線を描いた白い脚の先で、光沢を放つ漆黒のハイヒールが、コツ、コツと音を立てる。その音が近づくに連れて、俺は自分の胸中に芽生える「焦り」を感じた。

 わかっているから、だろうか。これから、俺が彼女に何を言われるのかを。

 その考えに至った時、彼女は俺の目前で足を止める。久水先輩のなだらかで端正な輪郭が、目と鼻の先に迫っていた。純白の柔肌の中で一際目立つ真紅の薄い唇が、照明の光を浴びて瑞々しい輝きを放つ。

 この光景は、よく知っている。俺の子種が欲しいとか調教して欲しいとか、そんな「おねだり」をせがんで来る時、彼女は決まってこれくらいの距離まで急接近してくるのだ。もっとも、大抵はすぐ悩ましい嬌声と共に、救芽井達によって引き剥がされていくのだが。

 ……しかし、今回はいつもとは違う。救芽井達は彼女のただならぬ雰囲気に戸惑って動き出す気配がないし、当の久水先輩自身も、普段の官能的な振る舞いとは掛け離れた佇まいだ。
 親友のことを思えば……彼女の怒りももっともだろう。だが、四郷にああ言われてしまった以上、俺も引き下がることは出来ない。
 恨んでもいいぜ、久水先輩。俺は、あんたの――大切な親友を、自分のエゴに巻き込もうってんだからな。

「龍太様。あなた様のためにも、撤回して頂きますわ。ジェリバン将軍との再試合。ラドロイバー捜索への関与。そして――『超機龍の鉄馬』計画の実行。その、全てを」

 そんな俺に対し、「義憤」を募らせた久水先輩は「正義の使者」の如き毅然とした出で立ちで、俺の瞳を真っ向から睨み付ける。

 ……全く。俺もすっかり、瀧上凱樹(ヒーローまがい)の仲間入りだな。

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