第188話 義憤の行方
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の身体でダスカリアンとお姫様を救おうなんて考えてる男に、普通の神経の女が付いていけると思う? 鮎子じゃなきゃ、あなたの望みは叶えられないのよ」
息詰まる俺を責め立てるように、鮎美先生は次々に言葉の圧力で畳み掛けてくる。言葉遣いこそ穏やかではあるが、その口調の節々には確かな熱気が篭っていた。
腹立たしいのかも知れない。最愛の妹に、こんな決断をさせた俺のことが。俺の中の、「怪物」が。
「……先輩。ボク、言ったよね。先輩になら、全部捧げられるって。あれに、嘘はないんだよ。だから……自分のシたいこと……我慢しないで?」
「四郷……」
「……大丈夫。怖くないって言ったら嘘になると思うけど……先輩の傍なら、きっと大丈夫。そう、思うんだ」
そんな俺を姉から庇うように、四郷は優しげな声色で、囁くように語りかけてくる。まるで、子を慰める母親のように。
外見に隠された、年の功。その片鱗を目の当たりにした俺に対し、彼女はさらに背中を押した。
「――だから、今度はボクにも。ワガママを、言わせて欲しい。一緒に……居させて?」
さながら、兄に甘える妹のように。今までの佇まいを覆す、上目遣いで。彼女は、俺のそばに居たいと――そう、言ったのだ。
拒めるわけが、ないだろう。ワガママだと言われて、図星になって。その後にワガママを言わせて欲しいと言われたら。
嫌がる俺が、馬鹿みたいじゃないか。虫のいいことしか言わない俺が、情けないじゃないか。
――恐らく、彼女に掛かる精神的な負担は生半可なものじゃないだろう。十年間という年月を掛けて刻み込まれたトラウマが、そうホイホイと解消されるはずがない。
俺はそれら全てを分かった上で、彼女を「超機龍の鉄馬」に乗せるのだ。それが、どれほど罪深いことなのかも。
そんな俺に出来ることは、彼女の負担を少しでも削ること――すなわち、一刻も早くこの事件を解決することだけだ。
痛みも苦しみも避けられないのなら……せめて、一瞬にしてあげたい。いや、もうそれしかないんだ。
だから、ごめん。いや、ありがとう四郷。少しだけ、力を借り――
「認めませんわよ。そんな狼藉は」
――ッ!?
「こっ、梢先輩? いきなり、なにを……」
「いきなり? ワタクシに言わせれば、あなた方が勝手に進めているこの狂気的な話の方が、余程『いきなり』でしてよ。殿方の顔を立てるためにも、話が終わるまでは口を出すまいと控えさせて頂いておりましたが――もう、限界ざます」
「……梢……?」
四郷の意思を汲み、この計画が纏まる直前のことだった。久水先輩が、自分を訝しむ救芽井と四郷を一瞥し、俺を鋭い眼差しで突き刺したのは。
彼女は腕を組んだ姿勢のまま、全身から威圧感を雷のように走らせ――俺
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