第186話 良いも悪いもロリコン次第
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「ジェッ……ジェリバン将軍っ!?」
予期せぬタイミングでの来客に、救芽井は思わず声を上げる。他の皆も、少なからず驚いているようだった。
突如眼前に現れた、ブラウン色のスーツを纏う大男は彼らの様子を一瞥すると、病室の中へ静かに進み出る。
「――失礼する。さ、姫様」
「う、うん」
その後ろでは、小柄な長髪の美少年――じゃなくて美少女が続いていた。最初に会った頃の活発そうな振る舞いとは裏腹に、今の彼女はまるで、お通夜に参列しているかのように暗い。まぁ、実際お通夜になる寸前ではあったんだけどな。
「道が空いているおかげで、予定より随分と早めに着いてしまってな。驚かせてしまったようで、申し訳ない」
「……いや、別にいいさ。それより、決闘がもう必要ないってのは、どういうことなんだ」
「その前に私個人としては、身を挺して姫様を救って頂いたことについて御礼を申し上げたかったのだが――どうも貴殿にとっては、それよりも決闘の件の方が余程重要なことであると伺える」
「済んじまったもんをいつまでも引きずったって、過去は変えられないからな。ダウゥ姫をあの時助けられたと言っても、次の再試合であんたに勝たなきゃ意味がなくなる」
「……ないのだよ。再試合など」
「なんだと?」
俺から視線を外し、ジェリバン将軍は天を仰ぐ。
再試合がない。その言葉が意味するところを理解した瞬間、俺は自分の身体が赤みを帯びた鉄板のように、徐々に熱くなっていく錯覚を覚えた。
将軍本人に、もう一度戦おうという意思がない。つまり、決闘による判断が無意味になったということか。
ラドロイバーとやらの存在が発覚したことで、それどころではなくなった? いいや、それなら彼女の件が片付いた後に再試合を行えばいい話じゃないか。
彼女を捕まえれば決闘をせずともダスカリアンは平和になる? 違う、彼女を取っ捕まえたところで、民衆の憎しみの矛がアメリカ陸軍に向かうだけだ。そんなことになったら、世界最強の軍を相手にした国際紛争に発展する危険性すらある。ダスカリアンに、勝ち目などない。
それに、この決闘の主旨は「単騎で将軍を超える存在が日本にいることの証明」なのだから、俺と将軍が戦わなくちゃ意味がない。将軍だって、それはちゃんとわかっているはずだ。
……要するに。
「不戦勝で終わりにするつもりなのか、あんたは」
「当然だろう。貴殿の身体のことや御家族が負った痛みを鑑みても、そうするのが自然だ。それに、我々は非常に金欠でな。ラドロイバーという女が捕まるまで、静かに待っていられるような滞在費は持ち合わせてはおらん」
「ふざけっ――ゴ、ガハッ!」
「りゅ、龍太っ!」
「ダメよ龍太君ッ!」
「先輩ッ!」
身体の芯から熱くなっていく感覚に身を
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