第185話 エルナ・ラドロイバーという女
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った。
許されることじゃない。いいや、俺が許さない。その人を――放っておくわけにはいかない。
「――とにかく、そのラドロイバーって人を捕まえるまでは、決闘どころじゃなさそうだな。住民の避難はもう完了してるのか?」
「えぇ。一人だけ避難所から抜け出してきた人がいたらしいけど、たった今無事に保護されたらしいわ」
バイブが鳴っていたケータイを弄りながら、鮎美先生は呆れたような視線を俺に送って来る。おやっさんも無事のようだ。
ここまでのことをされた以上、逃がすわけには行かない。俺はおやっさんの励ましを思い返し、拳を握る――が。
その拳に、白く滑らかな手が添えられた。弱々しく寄り掛かるかのように。
「……ねぇ、龍太君。ラドロイバーはまだこの町に潜伏してる可能性もあるし、あなたの内臓もまだ不完全なのよ。今まで寝たきりだったせいで体力も落ちてるはずだし……その、気持ちはわかるけど、今回だけはあなたは動いちゃ――」
「――悪いが、ここまでやられて何もしないわけには行かないんだよ。俺は今だって資格者で、『救済の超機龍』なんだ」
「い、いけんよっ! あんな目に遭ったばっかやのにっ!」
「……抑えなきゃ、ダメ……! 先輩、ダメっ……!」
救芽井の言い分もわかる。今の自分の身体が完全とは程遠い、ということも。
だが、俺はここで引っ込んだままでいたくはない。例え、血ヘドを吐いてもう一度ブッ倒れようと――彼女を、止めなくちゃ行けないんだ。
矢村も四郷も俺の患者服を掴み、必死に引き止めようと引っ張っている。普段なら小言を言いつつもおとなしく従っていたところだが――今回ばかりは、彼女達の言葉を聞き入れる余地はなさそうだ。
一方、伊葉さんと古我知さんは痛ましい表情のまま、目を伏せてしまっている。自分達が決闘――すなわち今回の事態を招いてしまったと、再び責任を感じているに違いない。結局のところはラドロイバーという女性が悪いのだが、それでも結果的に片棒を担いでしまったと思い悩んでいるのだろう。
「……」
そんな中で、一番騒ぎそうな久水先輩は――腕を組んで膨大な巨峰を寄せ上げながら、ひたすら沈黙していた。
そして、何か言いたげであり――忌ま忌ましげな視線をこちらにぶつけている。……あれ程までに鋭い眼差しは、初めて見るな。眼を合わせるだけで、剣で刺されているかのように錯覚しそうだ。
他の男に向けているような見下した色でも、いつも俺に注いでいる情欲の色でもない。倒すべき敵を見るような――憎しみの色。
なぜ彼女がそんな眼の色を見せるようになったのか。この時の俺は、それを完全に理解してはいなかったのである。
「……ごめんな。それでも、俺はやらなきゃいけないんだ。それに決闘の原因がラドロイバーって人の仕業だと
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