第185話 エルナ・ラドロイバーという女
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もちろん世間で報じられているように、「救済の龍勇者」の性能を二分化することで兵器化を求める勢力に譲歩したことも大きい。が、そんなものは実際のところ、国連に話のネタを与える程度に過ぎなかったそうだ。
――というのが、救芽井から聞いた救芽井エレクトロニクスの繁栄の裏側。あまり聞こえのいい話じゃないが、綺麗事だけでは世の中が回らなかった、ということだろう。
「そう。国連による印象操作で立場が悪くなりかけた軍部は、痛い目を見る前にしっぽを巻いて逃げた……ってわけ。ゴリ押しで兵器にするだけの価値があるのかも、当時はわからなかったしね」
「それでも兵器化を推し続けたから、同じ軍人達から疎まれて追放された、ってことなのか? 一体、どうして……」
「さぁね。私も『新人類の巨鎧体』の設計に携わった時に何度か彼女と話したことはあったけど、そこまで親しかったわけじゃないから詳しくはわからないわ。ただ、そうさせるだけの何かがあったんじゃないかしら」
そこで一度言葉を切り、鮎美先生はプロジェクターを胸元にしまい込む。そして――鋭い眼差しをこちらに向けた。
まるで、槍で刺し貫くような――覚悟を問う瞳だ。
「――ま、これでだいたいの意図は読めたわね。向こうの狙いは恐らく、着鎧甲冑の兵器化。そして――『救済の超機龍』の抹殺」
「抹殺……ね。俺のタマを取る意味を聞きたいもんだ」
「最高傑作である『救済の超機龍』の奪取と、一種のみせしめじゃないかしら。『人命救助なんて負け戦してたって所詮はこうなる運命。だったら兵器として戦って成果を挙げた方がマシでしょ』……ってね。あの手のマッドサイエンティストにはありがちな思考回路よ」
「あんた鏡見たことある?」
「失礼ね。私はマッドサイエンティストという名の清廉な淑女よ」
「結局マッドじゃないか」
「ほっといて頂戴」
命を狙われる恐怖に呑まれまいと、敢えて軽口を飛ばす。そんな俺の意図を汲んでか、彼女も冗談めかした返事を寄越して来る――が、その眼は微塵も笑っていない。
「ダスカリアンに凱樹の情報が漏れたのも、彼女の仕業と見ていいわ。決闘になる事態を誘って、そのゴタゴタに紛れてあなたを殺すか。もしくは目の前で犠牲者を出させることで、精神的になぶるつもりでいたのか――どちらにしろ、悪趣味には違いないわね」
「俺を潰してから『救済の超機龍』を頂く寸法、ってわけか」
「今やあなたは救芽井エレクトロニクス最強のヒーローで、言わば樋稟ちゃんに次ぐ同社のシンボル。そんなあなたを存在から否定することで、もう一度世界に自分の主張を訴えようとしているのかも知れないわね」
俺のために作り出された「救済の超機龍」が、兵器のために使われる。そして、その野望のために俺は作り物の内臓を入れられ、兄貴は瀕死の重傷を負
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