第184話 温もりと拳骨
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いもんはやりたいことを、やりたいようにやりゃあいいんや。それが本当にどうしようもないくらいの間違いなんやったら、俺達大人が腕ずくでブチのめしたる。……今度こそ、や」
「今度こそ」。その言葉が意味するものを考えた俺の頭の中に、あの赤髪の戦士のビジョンが浮かび上がった。
この町の皆はやはり――俺に瀧上の姿を重ねていたのだろうか。
「それに……お前がどんな失敗をしよったって、『まだ』その力を必要としとる連中もぎょうさんおる。途中で諦めて、そいつら全員見放すようなマネでもしおったら、俺が地球の裏側――いや、宇宙の向こうまで追いかけ回して、さっきよりキツくドツいたるけんな」
「……」
「やから賀織のためにも……さっさとシャキッとせぇよ。お前の『力』も、『生き方』も、まだまだ皆には、必要なんやけんの」
畳み掛けるような説教は、そこで一区切りを迎えた。武章さんは最後に俺の額をデコピンで弾くと、踵を返して咳ばらいをする。
そして、「さぁて」と小さく呟いてから、再びこちらへと向き直るのだった。
「俺が言いたかったんは、こんだけや。今の拳骨の痛みも言葉も、全部しっかり『救済の超機龍』に伝えとけよ。ええな」
「……はい」
言動の節々に違和感こそあるものの、どうやら俺の素性まではバレてはいないらしい。そのことに安堵しつつ、武章さんの言い付けに対して返事をした俺の声色は――自分でも驚くほど、穏やかなものになっていた。
ただ殴られて、説教されただけだというのに。少し話しただけだというのに。なぜ、こんなにも気持ちが落ち着いているのだろう。なぜこんなにも、暖かいのだろう。
「返事が弱い。男なら、気合い入れて返事せぇ!」
「は、はいっ!」
そう一喝する彼に頭を掴まれ、乱暴にわしわしと撫でられた時。俺は、「錯覚」していた。
彼に背中を押され、少しずつ……ほんの少しずつ、心が活力を取り戻し始めている。そんな、おこがましい「錯覚」だ。
――しかし、今はそれでいい。誰かに許されてそう思っているわけじゃないが……この「錯覚」を手放してはならないと、本能が訴えているのだ。
兄貴のことは、今でも濃厚に記憶の全体にこびりついている。その上で俺は浅はかにも、この温もりと「錯覚」を享受しようとしていた。
物理的にも精神的にも、ぽっかりと穴を空けられてしまったこの胸の、いびつな隙間を埋めるように。
「フン、男はそれくらい元気がねぇとな。よし……俺はもう隣町に行くけんのぉ。お前らも用が済んだら、さっさと逃げるんやで」
「……はい。武章さんも、道中気をつけて」
「バァーロゥ! 『武章さん』なんてやめぇや、気持ち悪ぃ。『おやっさん』だ、『おやっさん』」
「え……? わ、わかりました。えと、お、おやっさん」
しか
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