第184話 温もりと拳骨
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
。
「……足手まといなんは事実やし、娘を迎えに来たつもりやったんやけどなぁ。当の賀織から『龍太を置いて避難なんて出来んっ!』って、物凄い剣幕で噛み付かれてのぉ。しゃあないけん、お前に『救済の超機龍』への伝言を伝えて帰ることにしたんや」
「伝言……?」
そう言って、彼は作業着の袖を捲って小さな歯形を見せ付ける。物理的に噛み付いたのかよアイツ……。
――それはさておき、「救済の超機龍」への伝言……か。妨害者の正体を掴めず、ふがいない失態を侵した俺への、叱責に違いあるまい。
この町の皆を守る。それだけのためにこの町のヒーローとして常駐してきたのに、こんなザマでは信用なんてあったもんじゃない。
……何を言われても、真正面から受け止めるしか、ないんだ。俺には、反論する資格なんてない。
険しい表情を湛えた武章さんが、静かに歩み寄る。そこからどんな言葉の暴力が来ても、俺は目を背けたりしない。背けることなど、許されないのだから。
「よぅ、あの赤いヤツに伝えとけや」
「――!?」
しかし。
飛んできたのは言葉の暴力ではなく――拳骨。意表を突いた武章さんの鉄拳は、反応する暇も与えず俺の脳天に減り込んだのだった。
「つうっ……!?」
思わず頭頂部を手で抑え、うずくまってしまう。しかし、猛烈な激痛ではあるものの……たんこぶまでは出来ていない。
痛みだけを与え、怪我はさせない――昔ながらの躾のような、完璧な加減による一撃だった。
「お前がどんなに苦しい思いで、ヒーローになったかは知らん。お前がどんな覚悟を持って、俺らを守っとるんかは知らん」
「……!?」
「――やけんど、お前が命張って皆のためになることをしとる。その事実だけは、町の皆はちゃんと知っとる。やから、誰もお前を責めたりなどせん」
「……」
「この先どこかで、そのためにどんな間違いが起きたとしても、お前は自分を曲げたらいけん。それは、それまでのお前の生き方で救われた連中を、否定することと同じやからや」
そう言い放つ武章さんの眼差しは、俺の眼を捉えて離さない。険しくも、どこか温もりを漂わせるその佇まいは、えもいわれぬ安心感を与えていた。
……救われた連中の、否定……。
ふと、俺の脳裏にダウゥ姫の泣き顔が過ぎる。あの時、俺は彼女のために串刺しになり――兄貴は瀕死の重傷を負った。
それは、許されない俺の過失。だが、助けなければ彼女は命を落としていたかも知れなかった。ゆえに悔いてはならないと叫ぶ、自分がいる。
それを真っ向から認めた存在は――何かと俺に突っ掛かっていた、あの武章さんだったのだ。
「だいたい、若造如きが『何が正しい』だの、『何が間違い』だのと、そんな高尚な悩みを抱えるなんざ百年はえぇ。若
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ